君の遠影、碧空に尽き(シェゾ)


※また悲恋ネタ


胸が苦しくて、目の前の景色が軽く歪む。
私は近くにあった椅子に座りこみ、大きく前へとへたれこんだ。
別に何か病気になっている訳ではない。私は健康だけれど。
……恋の病になら、現在進行形で掛かっているかもしれない。しかもかなり重めなやつ。

「……はぁ」

小さく溜息を吐く。胸が苦しい。強く締め付けられるような、ぎゅっとした痛みと温かい何かに小さく身を震わせる。
心を落ち着かせるためにさっき買ってきたぶるぷよチョコを口に含んだ。ほろ苦い味が口の中に広がるだけでどうせ何も変わらないけれど。

『最初で最後の願いだ。――お前の全てが欲しい』

そう言って笑った彼は、もう居ない。
最後のお別れもした。一度だけした抱擁は温かくてとても幸せだった。
繋いでいた手の感覚もまだ残ってる。けれど、居ないものは居ない。
けれど勿論想いは忘れられなければ捨てることも出来ず。なんなんだろ、この感覚は。
お陰さまで最近はあいつの夢をよく見る。夢は願望の表れとよく言うがこれこそまさにそうなんじゃないか。
本当に、これだけは譲れない。
堪え切れなくなり、私は静かに目を閉じた。

「シェゾ、アルル、サタン、ルルー、ウィッチ……」

瞼の裏に出てくる色褪せた映像は随分と過去のもの。
そう、シェゾが居なくなったということはあっちの世界に居た人も皆居なくなってしまったということだ。サタンもアルルも、皆皆。
……いつしか、私の頬に冷たいものが伝る。
これは自分の涙。分かり切っている。――けれど、認めたくない。
あいつの為に泣くなら、それはきっと死ぬ時とかそれぐらいだ。
思い出に浸っては泣く程私は弱くない。なのに、なのに。

『……シェゾ、私もあんたの全てが欲しい』

あの日言いきれなかったこの台詞は、何にぶつければいいんだろうか。

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