特別な君に。(レムレス)


教室二つ分の大きさの部屋。
静かで少し暗い。
一応、陽の光はあるのだけど。

私はここで小さな喫茶店を営んでいた。
まぁ、来る人は少ないのだけれど。
たまに、ここの近くにある学校に通う子どもたちが来るくらいだ。

最近の日課といえば。
ここに来るようになった一人の人がいた。
緑を基調とした服装の、不思議な人だ。
杖を持っていることから、魔導士なのだろうと推測する。

彼は突然、ここに来た。
カウンターに座り、私の方を見る。
私はメニューを取り出し、彼に渡す。

「ありがとう」

低い声にしては透き通っており、ゆっくり言い聞かせる……そんな声だった。
彼はメニューを少しの間、見ていた。やがて顔を上げ、笑顔で言った。

「コーヒー、砂糖を最大の量ででお願いします」

私は彼の言った注文に驚きつつも、コーヒー(砂糖最大量)を彼に渡す。
彼はそれを受け取ると、一口飲んだ。
そして再びあの笑顔で私の方を見た。

「おいしい。本当にありがとう」

私の口元が自然に上がるのを感じた。
それが、彼との出会いだった。
名前を、レムレス、と言うことも知った。



私は甘党派のレムレスに例のコーヒーを差し出す。

「レムレスさん、今日はどういうことがありました?」
「そうだなぁ、ナマエにこの話はしてないかったよね?」

レムレスはここに来る度に、いろいろなことを話してくれる。
大事な後輩のこと。
ぷよの連鎖方法。
たまに、私とぷよ勝負することだってあった。
すごく、楽しかった。

それと同時に、レムレスとの恋愛をすることも叶わないのだと知った。
後輩の話をするとき、凄く楽しそうだったから。
実際、その二人を見たことがある。
楽しそうに、ぷよ勝負をしていた。
見たこともない笑顔だった。

最初はショックだった。
だけど、それはとても無意味だということも今ではよく分かる。
それなら?
そんな彼を支えることが、私の唯一出来ることなんだろうな。

音が響く店内。
最近はオルゴール音楽を流すようになった。
もちろん、これはレムレスの提案だ。

カラランッ

ここについているドアベルが来客の存在を告げる。
時計を見る。やっぱりね、予想通り。

「いらっしゃいませ、時間通りですね」

大事であり、大好きな来客が立っていた。



==========
はい、謎の喫茶店ネタです。
年齢は気にしたら終わりですよ。きっと。

もともとやってみたかったので、まあまあよかったなーとか。


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