闇。
ただ、ただ、広がる闇。
あれ?
――どうやってここに来たんだっけ?――
うまく思い出せない。
言い表せない。
ただ、ここにいると。
不安よりも安心感の方が強かった。
理由なんて分からない。
これが自分?
それすらも分からなくしてしまう忘却の彼方にあった。
闇なのに。
足元はしっかりしている。
大丈夫。
少しずつ。
道なんてどこにもないのに、私はただひたすら歩く。
どのくらい歩いたのかな。
振り返っても闇。
前を向いても闇。
上下左右、東西南北。
闇。
このまま身を投げ出せば楽になるかな。
何もない虚空に身を投げ出そうとする。
でも、出来なかった。
白いモノが私の目の前を照らしていた。
光。
今までとは違う、光。
明るい。
あたたかい。
さっきまであんなに安心感があったのに。
いっそ委ねてしまおうなんて思ったのに。
ああ、やっぱり光がいいのだと。
光の向こうから音がした。
何かが崩れる音。
誰かの叫び声。
そうだ、思い出した。
私はなぜここにいたのか。
――私は……――
「………ナマエ!?」
「あれ、クルーク……?」
「ナマエ!本当にナマエだよね!?」
私は頷いた。
辺りを見回すと白い壁。
どうやら病院のようだ。
「ナマエ、覚えているかい?」
「もちろん」
そう。私は崖から……崩れ落ちた崖から落ちた。
クルークと海を見たくて。
私の不注意がいけなかったんだけど。
「ナマエ」
「なに………!?」
クルーク?
何で私を抱きしめてるの?
ああ、嬉しいのかな。
いつも自分のことを『天才』と言っていたあのクルークが。
私のことを、心配してくれたのかな。
私も、戻ってこられて良かったよ。
「心配してくれてありがとう、クルーク」
私は抱きしめる力を少しだけ強めた。
少しだけクルークが反応したのか、こちらも強く返す。
その些細なお礼として。
境目から帰ってきた小さな祝福として。
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力尽きました。
何でこんな暗いもの書いたんだろう。
今更ですが。
(26/62)
title bkm?
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