なんか違うクルークさん


「うおおおおおおおおおおおお!!」

帰宅。勢いよくドアを開き、その勢いのままドアを閉ざす。
ああ苦しい。全速力で走ってきたから鼓動がとんでもなく早いよ。死にそう。いや本気で。

「はあ、はあ……」

どうして私がこんな目に合っているのか。理由は数分前に遡れば分かるけれど面倒なので省略。
……ああ、あの時ウィッチさえ居なければ!

「ナマエ〜、どうして逃げるんだよ〜」
「うわ来るな変態!何度もいうけど私はお前の恋人でも何でもない!!」
「家あーけーてー」
「誰が開けるか誰が。さっさと帰れ!」

ああ、来た。変態と化したメガネが来た。
いい加減分かったと思うし今更だけれど私が逃げていた相手はクルークだ。
腕は絡めてくる、手は頬を撫でる、吐息がすげえ色っぽい。私を何だと思ってるんだこいつ。誰かに絡みたいのならあの時一緒に居たウィッチの方に行きなよ鬱陶しい。
あーめんどくさい。こういうタイプの人って一番めんどくさい。
……まあ、つまりこいつは酔っているんだ。ウィッチの作ったアレのせいで。

「そんなにナマエはボクが嫌いなのか〜?この天才で、偉大で、クールな未来の天才魔導師クルーク様が〜」
「取り敢えず寝言は寝てから言いな。酔いがさめた後後悔するよ」

もう嫌だ、この状態のクルークさんと絡みたくない。せめていつものナルシストで居てほしい。
ちなみに今のこいつがどれくらい絡み辛いかというと大体レムレスくらい。
残念ながら私とあの人のタイプは驚くほどに違いすぎる。雰囲気が柔らかいのに色々と掴めないってなにそれひどい。
そんなどうでもいいことを考えていると、目の前にあったはずの玄関のドアがいきなり砕け散った。
物凄い音と呪文を唱えるへなへなした声。さて修理代いくら請求してやろうか……って違う。
つまり、これは。

「そんなところに居たんだ〜、ナマエ〜」
「う、わ」

こっちくんなこっちくんなこっちくんな。そう心の中で叫ぶも意味は皆無だ。
彼は「ウィス・アトラヘンディ〜」と柔らかい声で呟き、私の身体を引き寄せる。
確かにこっちに来ている訳ではない。むしろ私の方からくっついている。
やめて。私まだ死にたくない。まだ生きていたいのに。そもそも殺す気なんてこいつにある訳無いんだけど。
クルークはやがて幸せそうな笑みで私の身体を抱き寄せると、俗に言うお姫様だっこというものをして家の中に不法侵入してきた。

「あ、あの、クルークさん?」
「一緒、ナマエと、ずーっと一緒〜」

彼は私をソファに降ろすと、隣に座りぎゅーっと抱きしめた。
どうしよう、こいつ。



………………
自分の考えていたものとも違うっていうね。

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