向日葵の少女・上(レムレス)


暑い太陽の照る下で、それのように輝いて咲く向日葵。まるで緑と黄色の海――そう、此処は私の向日葵畑。
私と花だけの世界。誰にも邪魔されることのない。
そこにある日、侵入者が訪れた。

「わあ、綺麗な向日葵畑だね」
「そうでしょう?向日葵は太陽に向か……って何者!?」

突然何の気配も前触れもなく現れたそれに、私は一瞬たじろぐ。
どうやら悪意は持っていないらしいけれど……どうやらその人は一見して魔導師のようだった。この花畑に何かするつもりなのか。

「こ・ん・に・ち・わ。彗星の魔導師、レムレスだよ。別に何か変なことをしに来た訳じゃないから安心して」
「彗星……?そう。私はナマエ、この向日葵畑の主。珍しいわね、こんな処に人が来るなんて」
「ナーエの森の奥に綺麗な黄色が見えたからね。気になって来てみたんだ」
「そう」

どうやらただの見物客のようだった。それなら特に相手にする必要もないわね。
溜息を吐いてその場を去ろうとすると、彼に呼び止められる。

「待ってよナマエ、もう少し話そうよ」
「残念ながら私は忙しいの。これだけ広い面積の花畑を持っているのだから」
「じゃあ、歩きながらならいい?」
「う……」

正直人と話すのはあまり好きじゃない。だからこそ誰も来ないであろうこの場所に花畑を作ったというのに。
でもだからといって断るのは流石に止めた方がいいか。相手は彗星の魔導師、この場所に何かあったら私も本気で戦わなければならない。けれどその戦うための力は全て向日葵に回してしまっている。
……仕方ない。

「分かった。じゃあ付いてきて」
「うん」

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