恋をしていた人形少女


「……」

恐ろしいくらいに静かな、青い空。
何一つ生物の居ない、静かな大地。
――いつからだろう、ここから生き物が消えたのは。
覚えていないけれど、理由なら分かる。
壊れたオゾン層、墜落した核ミサイル、そしてカラカラに乾いた大地。そして、夕方でもないのに紅く見える遠い空。
これで分からない人など、居ない筈だ。

そう、生き物は、人間はこの「地球」というセカイの全てを穢し、使い果たした挙句此処から逃げ出したんだ。
自分たちだけは生き残る為に。これは大半が人間達がやらかしたことだというのに、奴らは責任を放棄した。
でも、私は逃げなかった。逃げられなかった。だから、ただ一人此処に居る。
紫外線の届きすぎる、カラカラに乾いた、そして原子爆弾の放射線が未だ残るこの場所に。
こんな所に居ては、普通の人間ならすぐに死んでしまうだろう。でも、私は違った。
……私は、誰かに造られた『人形』だから。
それを知ったのはつい最近のこと。
最初は信じられなかったけれど、この世界に居てもなんとも思わない、思えないのだから、もし私が人間だったとしても、どうせ人形と同じようなものだろう。
なら、私がなぜ心を持つのか、なぜこんなにまともな思考ができるのか。その理由は分からない。
ただ、いつからか自然と考えられるようになった。
それは――ああ、いつだっけ。
確か、男の子。前髪で目を隠した、不思議な男の子。その子と出会った時だった気がする。
彼は私に色々なことを教えてくれた。りんご、という友人も紹介してくれた。
彼女と私はすぐに仲良くなった。……でも、それから彼女と彼の姿を見るとその度に私の胸は痛くなっていった。
それはどうしてなのか。それは今の私にも分からない。
ただ、彼女が彼と一緒に居るのが嫌だった、としか。

それから暫くして、核爆弾が落ちた。学校、という場所の割と近くに。
どうして。私は疑問に思い、彼の持ってきていた本をこっそり読んでしまった。
そして、知ってしまった。人間の愚行を。私の真実を。

その後、すぐに戦争のようなものが発生した。
私は彼らに連れられ、どこか変な場所へ行く事になった。
そして暫く眠っていると――

目覚めた時、彼らは血塗れになり死んでいた。
私だけが唯一、ただ一人生き残っていた。
どうして私だけが。悲しかったけど、いくら苦しくなっても涙が出ることは無かった。
それからそれはどんどん激化していき、気付けば残ったものは荒れ果てた大地だけだった。
彼らが持っていた行き過ぎた技術が、自らの身を滅ぼしたんだ。
……だというのに。人間は何故此処から逃げたのだろう。
悔しい。許せない。でも、私は対抗する気も何も起こせなかった。


ああ、こんなに悲しかったんだ。こんなに苦しかったんだ。
全てを思い出し終わり、乾いた地面に横たわる。
彼らは今頃どうしているのだろう。幸せな場所に行けたのだろうか。
目を閉じ、ただ深く息をすると、なんだか私でも安らかに眠れる気がした。
でもそれは許されない。少なくとも、奴らの犯した罪を私が全て償い終わるまで。
勿論そんなことは御免だ。でもそれなら私はここで永遠に生きることになる。

それでもいい。これはこれで幸せなのだから。


人は自分の支配する、自分だけの世界を求めた。
それは、何を生み出すこともないと知らずに。



……………
思っていることをそのまま文にしたらこうなった

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