ミュージックレイン(シグ)


「暇だねー」
「暇だー」

私とシグ。
二人で校舎の窓辺なう。
放課後、晴れたら虫を捕まえに行こう。
そんな約束をしていた。
だけど残念ながら、雨。
どしゃぶり。
止みそうにない。

「シグー」
「?」

彼は名前を呼ばれ、こちらの方を向く。
眠そうな目。
顔を動かすたびに揺れる二つのアホ毛。
見えそうで見えない水色の魂。

「なんでもない」
「そっか」

また窓の方を向く。
草木が雨水に滴って大地に落ちていく。
私は息を吸い込む。

「しーずかにーおちーるーしずくをーうけーとめー……」
「?」

いきなり歌い出した私にシグは私の方を見る。
題名は確か『雫の先に』だったはず。
この歌は昔、誰かに教わった歌。
もうその人の名前や顔すらも覚えていない。

「そっとーここーろにーきーざみーつけー……」
「こことはーちがーうーだれーもーしらーないー……」
「!?」

今度は私が驚く番だった。
まさか、シグがこの歌を知っていたなんて。
私の記憶が正しければ、これは最近作られた曲ではない。
だから、みんなが知ってるはずはないって思っていたのに。

「驚いた」
「え?」
「ナマエがこれを知ってたから」
「私もビックリしたよ。『雫の先に』……でしょ?」
「……うん」

そういったシグは晴れやかに笑っていた。
彼は息を吸い込む。

「ふしぎとーつなーがるーせかーいーへー………かな?」

私は頷く。
そして私も息を吸い込む。

「そうーきみーはー」
「ひとーりーだけじゃないー」
「きっとーぼくーらがー」
「そばにいーてあーげるー……」

「そこーにーしたたーったー」
「しーずくーというなのー」
「なーみだーはしぜんとー」
「あーふれーすべーてー」
「どこかにーかぜとともに」
「ながされーみずとともに」
「だーれかーがーかならずー」
「きづーくーからー……」

どこかに味方はいるということを、前に独りだった自分に気づかせてくれた歌。
同時に、私に元気をくれた思い出の歌。

「シグ、一緒に歌えて良かった」
「……ナマエも?」
「そうなの?」
「うん」
「……また歌おうね!」
「……うん……!」

そして、シグと私の思い出の歌。


二人で笑った窓の向こうに、雲の隙間から太陽が差し込んだ。




==========
なんか歌に関することをしたかった。
歌って、不思議な力があるのかもしれない、と思う今日この頃です。
本当に素晴らしいです。歌の力って。


※ちなみに作中にあった歌は実在しません。
 小説作成中に思い浮かびました。
 意味は……特にありません、多分。


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