素直じゃないけど(クルーク)


暗い空。
上がる湿度。
下がる気温。
そして冷たい風。
……うん、なんだこの悪天候は。

「うへぇ……帰れないじゃん」

学校から図書館へ行き、閉館時間が近くなったので帰宅。
そして家で好きな本を好きなだけ読みふける。その筈だった。
だというのに、図書館を出た私を待っていたのは「帰らせねえよ!?」と言わんばかりの大雨だった。あとおまけに暴風。
天気予報では夕方から曇るとは確かに言っていた。
だからといって雨が降るなんて……傘、持ってきてないよ。
ああ、寒過ぎて鳥肌が……

「そこで何してるんだい?」
「うわっ!?……って、なんだクルークか」

いきなり声を掛けられ、私の体は大きく跳ねる。
良かった、レムレスや変態じゃなくって。

「そんなにビックリした顔して、どうしたんだい?それから邪魔なんだけど」
「ああ、ごめんごめん。傘忘れちゃって」

いかにも「早く帰らせろよ」という顔をした彼の見えない圧に負け、横に退く。
いつも通り大量の本を抱えていた。30冊ぐらい。
……重くはないのだろうか。

「へえ、本当に君ってドジだね」
「天気予報に嘘吐かれるとは思ってなかったからさ。雨止まないかなー」
「……」

クルークは傘を開こうとして、やめる。
そして、こちらを見つめてくる。
何、その目は。私に何をしろと。
あとその傘を持ちながらこっちに突き出される左手も。

「……何」
「キミ、何ならボクと一緒に相々傘してやってもいいんだよ?」
「はい?」

クルークから出た言葉は思いもよらないものだった。
確かに大雨が降っている今、傘をさせるのは嬉しい。しかも話し相手がいるのは。
でも、なんでこいつが相々傘なんて言い出すんだ?

「えーっと、クルークさん。それはどういう」
「言葉通りだよ。ボクの本を濡らさないためにも、キミにさしてもらう」
「ちょ、待っ」
「ほら、早く!このクルーク様の誘いを断る気かい?」

そんな呆れた口調で言われましても……
彼は私の手に紺色の傘を持たせ、そして引き込む。
どうやら拒否権は無いらしい。なんなんだ一体。
相変わらず考えていることが微妙に分からないな、こいつ。

「ありがとう、クルーク」
「礼なんていら……コホン。こ、このクルーク様のご厚意なんだから重く受け止めろよ」
「はいはい」


いつもと少し違う帰り道。
さり気なく重ねられたその手は、温かくて優しかった。



…………………
雨の自然音を聞くとどうしてもこういうのが書きたくなる。
集中できるけど聞き始めの方で鳥肌が立つのが何とも言えない

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