少女的哲学(あやクル)


今、私は此処で生きている。
それは何故?
此処で息をしているから。

もし、私が死んでいたのなら。
それは心を持たない。息をすることもない。
ただ静かにそこで朽ちているだけ。

もし、君がそれを知っていたら。
何をするのだろう。
そのまま放置する?
砕いて燃やす?
蘇らせる?

そもそも、その死を蘇らせることができたとしたら?
この世界はどうなるのだろう。
素晴らしい画家や音楽家たちによる芸術的な世界が広がっているのだろうか。
人類はこの世界に居なかったのだろうか。
死、というものを恐れなかったのだろうか。

もし、死を誰も恐れないとしたら?
きっと心が腐っていくのだろう。
生きることに飽きて、きっと何もできなくなる。
どちらにせよ、生物には衰退というものが必要なのだ。

私はこう思う。
人間は何かに縛られていなければ生きていく事が出来ない、と。
限りがあるからこそ、子孫を残すために人を愛する。
縛られているからこそ、知恵を振り絞る。
これが無限となってしまえば、生きる気力も何もかもを失ってしまうだろう。

そして、私も今……彼に愛されている。
彼に縛られている。

「……ナマエ」
「分かってるよ」

言葉など伝えなくても分かる。
縛られれば縛られるほど人とは安心するもので、そしてより同じ感情を抱くことができるから。
私は彼を抱き締めた。
温かくて、とても安心する。
ただそれだけ、特に意味は無い。
しかし、人間は意味の無いものから有を生み出すことができる。
ああ、なんと魅力的なのだろう。

私一人では解明することのできない、「愛」という不安定な存在。
彼と共に居ることで、それは可能となるのだろうか。
もしそれが不可能だとしても、それでいい。
私は私、彼は彼。
互いに見えぬ糸で通じ合っているのだから。

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