誰も居ないはずの屋上(クルーク)



昼休みの鐘が鳴る教室。
私は真っ先にいつもの場所へ昼ごはんを食べに行く。
誰にも邪魔されない、一人でご飯を食べられる唯一の場所。
屋上。
大体の人は教室か中庭で昼ごはんを食べるから屋上に来る人は滅多にいない。
居るとしたら私くらいか。
高確率で誰も居ない、そんな私だけの世界。
今日はそこに、謎の眼鏡が居座っていた。

「……」
「なんだよ、その目は」
「別に」

こいつと話すといかにも面倒そうなので、単調な言葉でだけ返事をする。
そもそも口を開いて何か音を発すること自体がかなり面倒だ。
何故人は心を読み合う事が出来ないのか。
少し人間という種族を否定しそうになったが、それすらも面倒になりバッグから昼食を取り出す。
今日はソフトフランスパンとメロンパンのようだった。
いかにも甘そうなもの、いや甘いものしか無い。
少なくとも甘ったるいという表現の方が正確なくらい甘いものしか。
だが私はそんな味なんてどうでもいい。
きちんと眠くなりながらギリギリの状況で午後の授業を受け、なんとか解放される。
その毎日を送ることができるなら。

「なあ、普段はここでご飯を食べてるのか?」
「……」
「口くらい少しは聞けよ」

断る。
口を開く目的なんて食糧を口に運ぶだけで充分だ。
それ以外に用途なんて必要ない。
強いて他に必要とするなら……
いい。それを考えるくらいなら次の授業について考えた方がよっぽど有意義だ。
第一この眼鏡にいちいち構っている暇なんて無い。
忙しいわけでもないが、こいつの話なんてどうせ聞いても自慢話程度しか出て来ないのだろう。
それなら聞く意味が無い。時間の無駄だ。

「おい、ナマエ」
「……」
「聞いてるのか?このクルーク様の話を」
「……」
「何か反応くらいしろよ。ボクの会話が無意味になるじゃないか」

安心しろ、心配しなくてもお前の話は充分無意味だ。
黙って本を読むなり昼食を食うなりするがいい。いやしろ。
やっぱり私は面倒事が嫌いだ。
こいつはその私が言う「面倒事」の定義にきっちり当てはまる。
つまり何が言いたいかというと、私はこいつが嫌いだ。

「……去れ」
「はあ?」
「今すぐここを去れ。一度しか言わない」
「つまりそれはこのクルーク様に喧嘩を売っているということで間違いないね?」
「……」

はあ。
溜息を吐くことさえ面倒だ。
こいつはいちいちイヤミなことを言うから話が長ったらしい。
必要最低限のことだけ話せばいいだろうに。
そんなことを言ったら私も私か。
『一度しか言わない』、そんな忠告こいつが聞く訳が無い。
私は何も言わずにメロンパンをかじり、屋上を出るために立ち上がる。

「来るなら掛かってきなよ。このクルーク様に……っておい!待てよ!」

誰が待つか。
普通の人ならここで奴に苛立って攻撃するところだろうが、私はそうではない。
効率主義だからな。

「……あいつの所にでも行くか」

仕方ない、少し人は多いが中庭にでも行こう。
そこに奴が居てくれればいいのだが。


……………………
なんでこう文によって書き方とか色々差がありすぎるんだ。
ちなみに「奴」とはレムさんのことです。魔導仲間。

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