第五章「夢の中でも」


 これは夢なのか、そうでもないのか。私は気付くと草原の中に一人で立っていた。

「ドユコトー!」

 取り敢えず訳が分からないので叫ぶ。反響もなければ草以外が動く気配もなし。本当にドユコトだよ。しかも夢か現実か地味に分からないから動くにも動けない。太鼓界から別の世界に飛ぶとしたら今度はどこ?ポケモン?そんなの戦犯どらに向けてやってくれ。

「……歩こう」

 そんな一人ツッコミばかりしていた結果、流石に精神的につらくなってきたのでやっぱり大人しく歩き出すことにする。といっても景色はどこへ向かっても同じなようなので進む方向は言うまでもなく適当だ。それにしても戦犯どらが居ないならまだしもきせのんも不在って何?やっぱり太鼓界じゃないのかな。

「おーい」
「お茶はいらないよ」

 そもそも私はなんで一人でこの草原の中に立っていたのか理解ができないんだけど。別の世界に飛ばすなら三次元に飛ばし……

「えええええええ!?何々なんなの!?なんで教授がいんの!?」
「いや遅えよ!」

 どうやらここは天国でした☆何が原因だこれ。暖かい中毛布に潜って寝たから熱中症で南無したとか?

「そっかー、私もついに死んだかー。戦犯どらには精々頑張ってもらわないとねははははははは」
「落ち着け、ここはお前の夢の中だ」
「嘘つけこんな明晰夢見たことねえよ!ってかなんで夢の中でこんな意識持ててまともに話せるんだよ!訳分からんちーのだよ!」
「お前がな。取り敢えず一旦黙れ」

 教授はいつもの調子で、呆れたように笑った。どちらかというと普通に呆れられてるけどね。

「分かった、もう今更何があっても驚かない」
「既に驚いてるだろ。お前が奇跡的に俺のバチを回収してくれたから残留思念的な何かでひとまず意識繋げられた、それだけの話だ」

 自分でも何がどうなってこんな空間作れてるのか分からないけどな、苦笑いしながらいつもの癖か空中で譜面を叩き始める教授は普通に教授だった。

「ひとまず最低限のことだけ伝えておく。俺は今空の上にいる」
「やっぱ死んだのか教授」
「違うって。ヒントは天妖ノ舞、あれの歌詞思いだせば分かるだろ」
「そうか……いや知らねえよ」

 起きたら確認しろ、教授が微笑むと同時に風が強く吹き荒れた。刹那に空間が、微かに歪み始める。

「うん、分かってはいたが長くはもたないよな。もう一つ言っておくと俺は確かに空の奥にある館にいるが、大変な状態になってるから気を付けろ」
「大変な状態って何」
「操られてんだよ」
「わーい」

 その割に今こうして平然と話してるのが不思議で仕方ないんですけど気にしちゃいけないんですか。
 いけないんですね。

「ま、ぱんどらが居るなら大丈夫だろ。それから問題が猫なんだが……」
 ここで教授の言葉が止まる。私と教授の間の空間が見事に分断されました。
「ひゃっほうもうヤケだよどうすればいいんですかきせのんさん泣きそうだよ!」
「落ち着け!取り敢えず俺さえなんとかしてくれれば問題ないとは思うから……」
――『お前らは戦い抜け。俺も信じてみる』

 刹那に、夢は閉じられた。




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