第一章「少年は空を辿る」


 きせのんに道案内されること約十分。少し大きめの小屋に入ると、奥で見覚えのあるきせかえの太鼓が泣いていた。

「たかし、頼まれた人間を連れてきたドン!」
「……ありがとうだドン」

 たかしはゆっくりこちらへ歩いてきたのち、ため息を吐きながら座り込んだ。どうしよう、落ち込んでる。想像以上に落ち込んでる。

「キミが『きょーじゅ』のフレンドなのカッ?」
「うん、一応あの教授の生徒だよ」

 きせのんから話は聞いているドン、たかしはそう言ってもう一つため息。きせのんはというと相変わらずにこにこしていた。温度差がひどい。

「たかし、何があったのかもう一度詳しく教えてほしいドン」
「分かってるドン。……少し長くなるから覚悟して聞いてほしいドン」

 そして始まる回想。正直ドンドン言われすぎて精神的ゲシュタルト崩壊を起こしたのであまり聞けなかったです。
 しかしながら教授は猫のような何かに攫われたっていうのだけは理解できた。……猫のような、ってまさかあの猫じゃない、よね?

「武者太鼓なのにきょーじゅを助けられないなんて、武者失格だドン!」
「落ち着くドンたかし!」

 何より一つ突っ込ませていただきたい。この状況で人間一人私だけ物凄く浮いていませんか。主に語尾にドンがつかなかったりきせのんとたかしが現実の私ら以上にまともなところとか。
 そんな完全アウェーを食らわされている中、突如感じた視界の端の違和感――

「ここがたかしの家だドン」
「邪魔するよ」

 G……じゃない!戦犯どらだ!あと太鼓のぱんどらだ!

「わーい出た出た人間が出た!なんで戦犯どらがこんなところにいらっしゃるんですかってミサカはミサカは質問を投げかけてみたり!」
「なんで、ってきせのんから聞かなかったのか?あとお前はどこのビリビリ幼女だ」

 あ、そういえば言ってたわ。さっきぱんどらが居れば云々って普通に言ってたわ。でも人間が居るとは普通思わないじゃないですか。というかなんでゲーセンによくいる面子三人集合しちゃってるんですか怖い。

「い、一応聞いたと言えば聞きました、けど」
「お、おう」

 鈴飾りの付いた黒と白のモノクロな太鼓は、一目散にたかしの元へ走っていってしまった。やっぱり人間は人間、太鼓は太鼓で何かしらの塊ができるのは仕方ないのだろうか。
 しかしどうしてこうも簡単に別世界に知っている人物がホイホイやってくるんだろう。二度と出られぬ仕掛け設置されたの?帰り待ち疲れる気持ちも分かるけどなんか違くない?

 「しかし、どうしたんだろうな。たかし」

 戦犯どらは壁に寄りかかりながら呟く。この場合は人間の方を指しているのだろう。少し考えてみたけれど、やっぱり教授クオリティとしか言いようがなかった。

「もともと異変に巻き込まれやすい人ですから」
「まあな」

 勿論私と戦犯どらも巻き込まれやすい人物の中に入っている。そうじゃなきゃこんなカオスな状況になんてならないはずだしね。突然太鼓の世界へご案内とか異常事態でもない限りならないし。というか異常事態でもならんわ。

「そういえば、きせのんはここに来るのは初めてか?」

 ふと話しかけられて我に返る。ふわふわ考え事をしているときに外部から音が聞こえたときの驚きは異常だと思う。

「はい、今朝来たばかりです?」

 で、あまり聞いていなかった結果質問と答えがかみ合ってるのか分からず語尾が疑問形になる。しかし戦犯どらは気にせず話を続けた。

「じゃあ、まだ太鼓界についてはあまり知らないんだな」

 「たかしが落ち着くまで説明するよ」と言って戦犯どらは少し考える。ちょっと待って、なんで教授も戦犯どらもこの世界についてい色々知ってるんだ。

「まず、この世界と太鼓について。俺たちがよくやってる太鼓の世界。以上」
「短っ!」

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