第一章「別の世界で」


気付いたときには、少女は一人で眠っていた。
 明らかに見覚えのあるその場所は、自室。

「んー……」

 どうやら自分は寝ていたようだ。何か長い夢を見ていたような気がするが、それはきっと気のせいだろう。彼女は大きく伸びをして晴れ渡る空を見上げた。

「いい天気だな……ん?」

 ふと、視界の端の違和感に気付き伸びを止める。彼女は首元で輝く雫に触れる。光が反射して淡い緑色に輝いて見えた。
 ――なんだろう。とても大切なもののはずなのに、思い出せない。

「まあいいや。いずれ思い出すでしょ」

 彼女はネックレスを外し、制服のポケットへ忍ばせる。――そうだ、今日はいつもの平日。人間の世界ならば学校のある日。

「さて、今日も元気にやりますか!」

 立ち上がりながらそう呟いた少女は、朝食を作りにキッチンへ歩き出した。


 いつも通りに準備を済ませ、学校へと足を進める。寮生活をしているため道のりは短い。

「おはよう」
「ん?ああ、教授か」

友人と話をしていれば尚更だ。彼は持っていたスマートフォンをポケットに仕舞いながらゆるゆると手を振る。

「今日の時間割何だっけ?覚えてないんだけど」
「一時間目から理系教科ラッシュ。W数学と生物」
「それ以降は?」
「思い出したくない」
「体育か」

少女は苦笑しながら頷く。体育は彼女が苦手な教科の一つだ。

「まあ、バスケはまだ楽しいよ。怪我さえしなければ」
「そういやちょっと前まで指打撲してたもんな。気をつけろよ」
「うん」

それから暫く沈黙が続く。朝の空気は爽やかで、教授と話すことは大好きなはずだというのに――少女の胸には、どこか不安が渦巻いていた。

「……教授」
「なんだ?」

少年は真剣な目をした少女を見て、少しだけ身構える。

「私は今日何かをしなければいけないような気がするんだけどさ。何か提出物あったっけ」
「さあ。強いて言うなら数学の予習やらないと死ぬくらい」
「そうか」

その程度でここまで不安になっているとは思えない。彼女は浮かない顔のまま、いつの間にか正面にあった校門をくぐる。

「じゃあ、私は向こうの棟だから」
「おう」

私は何を気に病んでいるのだろう。彼女は疑問に思いながらも、数学棟へ歩みを進めた。


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これを書いてた時期私は突き指していました
それでもキミドリ段位初日に参戦した私はきっと勇者

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