第九章「どうにかこうにか」


 即座に戦犯どらが動き、教授のもとへ走っていく。……友人というか同じ仲間ではある以上、あんまり傷つけたくはないんだけどな。でも、それで躊躇している余裕はあまりないらしい。

「たかし、助けてやるからな」

 攻撃をうまくかわしながら、太刀で行動範囲や攻撃手段などを順調に減らしていく。が――

「あ」
「えっ」

 戦犯どらは突然開いた床の穴に対応するのに手間取り、隙を生んでしまった。このままではまずいので流石に私が間に介入、教授が攻撃するのを防いでおく。槍の柄は案外硬いらしく、大剣を素で受け止める程度の強度があってちょっとびっくり。

「大丈夫ですか、戦犯どら」
「お、おう」

即座に一旦距離を取り、再度詰められるのを防ぐためにもう片方の槍を取り出し投げつけた。どうしよう早々に腕が動かない。教授強い。

「さて、これからどうするか」
「互いに無傷で終わらせたいですよね」

 考えている時間はあまり無い。けれど強いて言うならチェックメイトというか、殺すことなく傷つけることなく強制終了させるような何かが欲しい。

「戦犯どら、鎖的な何かとか比較的拘束できそうな道具持ってませんか?」
「残念ながら持ってない。……来るぞ」

 二人で反対方向に逃げながら考える。残念ながら私も戦犯どらもあまり体力はないから早めに終わらせたいというのが本音だ。

「カーテンじゃ流石にどうにもならないよな」

 呟きながらギリギリのところでかわしつつ投げてない方の槍で威嚇はしておく。筋持久力が足りない。

「うわばばばばば!」
「きせのん!」

 はいトラップその2。私たちの今ベストオブ欲しいもの第一位に輝いている鎖に絡まって見事に転びましたとさ。危ねえ。

「きょう、じゅ」

 見事に腹から転んだのでまともに息が出来ず、槍も反動で手放してしまった。さていよいよ本当の意味で私も空の上かな、とか思ったとき。なんとなく頭の中で聞き覚えのある声がした。

『おい起きろ、永遠に眠るにはまだ十年以上早いぞ』

 知ってるわ。というか何勝手にテレパシーなんか送ってきてんの。余計応戦しにくくなるからやめてくれないかな!

「きせのん、動くなよ!」

 とか言っているところにさっき私が投げた槍が今度はいい具合に鎖を断ち切ってくださいました。早々に頭が眩んでよく状況を掴めなくなってきた中、ひとまず全力で教授の視界から抜けることに専念する。

『お前、よくこんなところまで俺のバチ持ってきたな』

 そりゃ、あんたが助かったら真っ先に返すつもりだからね。

『おう。ところで今千切れた馬鹿みたいに長い鎖あるだろ?手っ取り早くそれつかって俺止めてくれよ』

 自分でやれ。

『無理』

 だろうね。

「ありがとうございます!」
「おう、これで後は分かってるよな!」

 ひとまず攻撃を避けて戦犯どらが狙われ始めた中、裏でこっそり鎖を回収して最も奴から遠い場所へ逃げ込む。どう投げればいいんだろ、これ。

『取り敢えず適当に投げとけ』

 そんなことしたらむしろ惨事になるわ。戦犯どらを巻き込むこともなく、かつあいつの動きを確実に止めるにはどう考えても今の腕力だと足りないよな。じゃあ役割交代する?……駄目だ、しても状況が悪化するだけな気がする。というか教授は私の体乗っ取れないの?

『無茶言うな乗っ取られてるのは俺の方だぞ』

 ですよね。いや頭の一部既に乗っ取られてるんですけど。

『気にすんな』

 はーい。
 さて、どうしようか。太鼓組に力でも借りるか?でもぱんどらは何に変化させるか考える余裕ないしたかしは電辞書だし。きせのんにでも頼んでみる?液体に変化すればコケてくれるかな?

『それがいいと思う。粘度の高いものならいける』

 了解。私は一言脳内でそう言うと、きせのんの元へ走った。

「きせのん、頼みたいことがある。戦犯どらがそこの床を通過した直後に粘度が高めの液体に変化して教授の足止めをしてほしいんだ」
「了解だドン!……でも、完全には止められないドン?」
「大丈夫。そこは私がなんとかする」

 きせのんは私の持つ馬鹿みたい長い鎖を見てある程度把握したらしく、「わかったドン」と言って液体に変化し始めた。
 さて、後は戦犯どらに引き付けてもらうのみ!

「戦犯どら!こっちに逃げてください!」

 全力で手を振り、槍を壁に突き刺したのち気合でその上に乗ってみる。これで鎖投げたら本気で腕動かなくなるかもね。あらやだ。
 でも、これで文句は無いよね?

『ああ、うまくいくと思う』

 といった感じで本人からも許可が出たことだし、準備は万端。

「きせのん!」
「了解だドン!」

 戦犯どらが引き付けた教授をきせのんが捉え、転んだ隙に私が鎖を投げて――



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(10/12)
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