第八章「館の中へ」


「暗いね」
「メカドンが欲しくなるドン」

メカドンは懐中電灯じゃないと思う。突っ込みながら見据える空間はとにかくほの暗く、ただ絨毯が敷かれているというのが足元の感覚から唯一分かるのみ。

「きせのん、お前こんな暗いところ来て大丈夫か?俺も大丈夫じゃないが」
「問題ないです、暗いところには慣れているので」

 そうか、と戦犯どらは笑う。むしろ視力無い方が強いと思うんだけどな、暗闇。

「それにしても不気味だドン。きせのんは大丈夫カッ?」
「もちろんだドン。このくらい怖くないドン」
「そんなこと言ってても体が震えてるドン」
「ドン!?」

 とはいえ、変に寄り道しても仕方がないから今は足元の絨毯を頼りにして進んでいく。あとは迷子にならないよう、常に賑やかに喋りながら。しかしおかしいな、ここ敵の本拠地だよね。なんでピクニックに来た感じの楽しさになってるの?

「さて、そろそろ着いてくれないかな。ロビーにしては長すぎるよ」
「確かに、広間って大体ドア開いたらすぐかですよね」

 いや、そこは分からないが。戦犯どらは笑いながら言うが、緊張は緩めない。常に突然の攻撃に対応できるようにか、いつの間にか彼の手には太刀が握られていた。……最低限、今驚かすのは危なさそうだ。まずそんな気起きてなかったけど。

「……ドン」
「たかし、どうしたんだドン?」
「危ないドン」

 たかしは突然歩くのをやめ、周囲を確認し始める。そして宣言する。

「きょーじゅが……きょーじゅが、来るドン」

 一瞬時が止まったかのような感覚。次の瞬間、目の前が強い光に照らされた。

「ようこそ、私の館へ。歓迎するわ」
「ちょっ、えっ、ちー様!?」

 電気の点いた大広間。そこに居たのは黒いドレスを身にまとったちー様と――教授。

「きょーじゅ!」
「たかし、危ないドン!」

 たかしは戦犯どらの忠告も忘れ、笑顔で教授とちー様のところへかけていく。幸か不幸か辿り着く前に透明な壁に阻まれ被害は無かったけれど、そんなに教授が大好きなのか。

「ちー様……まさかあなたがこのようなことを?」
「ええ」
「どうして!」

 私が叫ぶと、ちー様は妖しげに微笑む。瞳は鋭く――まるで、かつて作った物語に居た女王『チーサ』のものだった。

「目的はあなた。ぱんどら先輩が私と一緒に居てくれるなら、たかしのことは喜んで解放するわ」
「……なるほどな」

 戦犯どらは真剣な顔でこちらへ振り向いた。私は同じ目で彼に応える。曖昧かつ身勝手な理由で戦犯どらを渡せるか。

「大丈夫です、戦犯どらをちー様に引き渡さなくても教授は帰ってきますよ」
「そうだな」

  私たちは『ニッコリ』と強い笑みで笑い合い、親指を立て交わした。ちー様はそれを見て、いかにも面白くないといったような顔で呟く。

「そう――交渉決裂って訳ね」

 好きにやってちょうだい、ちー様はそう言って透明な壁を取り払う。すぐに舞い降りてきた教授の顔は青白く、明らかに何かしらに乗っ取られていた。

「きせのんも武器持っておけ、普通に混戦になるぞ」
「分かってます」

 手には既に槍。戦う覚悟は流石にできてるし、戦犯どらと教授と何よりたかしのために負けられないことは分かってる。

「さて、やりますか」



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戦闘描写がうまくできません

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(9/12)
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