……冷静に考えてみれば意味不明な夢だ。ポーラが急いでいたからだろうか。
この内容をネスに伝えたところ、彼は急に顔色を変えた。そして僕を猛スピードでバーに引っ張って行った。
そして――
「……どうしてこうなったんだ?」
気付けばそこはムーンサイド。どうやらフォーサイドから別の街へ行ってしまったらしい。街の形は異常なほどにそっくりだけど。
「おかしいな、ちょっと前までここはフォーサイドのバーだったのに」
「余計にエレナ達から遠のいてるのは気のせいじゃないよね……」
ネスは苦笑したまま頷く。元々来るつもりだったし此処以外に行く場所なんて無いから確かに仕方なかったんだけど。
……それにしても、この街はあらゆるものが狂気に満ちている。
常に真夜中だしあちこちに敵は居るし進めない場所が意外と多いし。
「ハロー!そして……グッドバイ!」
「うわっ!?」
テレポートさせられるし。
「くそっ……スーパーボム!」
「ジェフ!そいつを爆発させたらダメージを跳ね返されるよ!」
……もう、訳が分からない。
全く、こんな所にずっと居たら主に僕たちの精神が危ないよ。雑魚が妙に多いから下手すればすぐ倒れるかもしれないこの状況で見えない壁や行き場所の分からないテレポーターと戦わなきゃいけないなんて……
「あー、もう!」
銃を投げ出したい。今すぐにでもこの世界を抜け出したい。でも、エレナが此処に居るんじゃないかっていう変な希望のせいでそうは行かない。今回はポーラも行方不明な上、ネスのことも考えなければいけないから尚更そうだ。
……エレナが居なかったら、僕は本当にこんな旅なんて出来ただろうか。多分無理だと思う。こういうことは基本的に守りたいものがないと出来ないから。
僕にそこまで守りたいと思わせるものなんてあいつしか無い。学校や博士でさえ、自分を守ることさえ難しいこの僕が心から守りたいと思えるのは。
「ジェフ、大丈夫かい?かなり深刻な顔をしているけど」
「大丈夫。まだまだやれるさ」
ため息を吐いて銃を仕舞う。敵がスーパーボムを落としたみたいだけど正直それよりペンシルロケットが欲しい。
いや、それよりも早くこの街から抜け出す方法を――
「……!」
そう思って溜息を吐いた時だった。
息が、止まる。
――信じられない。しかし、それは夢ではなく、確かに鮮明な現実だった。
「……エレ、ナ」
(10/12)
title bkm?
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