「一方その頃トコトコと床を後にし」
登校する学生尻目に……と。
どうやらポーラと私が捕らわれた場所は違かったらしい。
取り敢えずPKファイヤーで檻壊して逃げ出したはいいけれど……ううん、何処行ってやろうか。
まずさっきまで居た檻がモノトリービル地下っていうことは分かった。あとポーラがその階には居ないのも。
地上に出れば明らかに見つかる気がしたので地下を勝手に掘っちゃったけど……何で下水道と繋げちゃったんだろ。
しかもなんか目の前にいかにもなボス敵が居らっしゃってるし。
いっそここは倒すべきかな?一人だけど。でも一つ分かるのはデパートに戻るのは止めた方がよさそうってことかな。
……どうせ暇だし、折角だから倒してみるか?
「もしもしそこのネズミさんや。特に恨みは無いですがちょっと倒されて下さいな!PKビームβ!!」
あ、そういや獣系に効果抜群だったね、ビーム系。……ご愁傷様です
「……一瞬だったね」
「ペンシルロケット五発も打ったらそりゃこうなるさ」
あまりにも短すぎるボス戦を終え、明るさを取り戻したデパートを出ながら話す。ホテルに行くつもりだったから個人的には一発で倒せて助かったと思う。
それにしても、エレナもポーラも居なかったな。あの二人は何処に行ったんだ?
「取り敢えず今日はホテルに泊まろう。バーを見に行くのは明日」
「……うん」
何も出来ることは無く、取り敢えず僕らはとぼとぼとホテルへ歩いた。
『ジェフ、ジェフ!聞こえますか?私はポーラです』
――多分、これは夢だと思う。
そのくせ意識は澄んでいて、しっかりと自我を持てていた。
しかし――動けない。そこは、白い背景に囲まれた、無機質な部屋のような場所。
『返事ができないのは分かっているけど聞いて。……どうやらエレナが行方不明になっちゃったみたいなの』
エレナが!?
驚いて声を上げようとしたけれど、声は出なかった。
『私とエレナが捕らわれた場所は違うから分からないけれど……どうやらモノトリービルから逃げたしてしまったらしくて』
流石エレナ、あいつらしい行動をとるね。脱走なんてしたら余計助けられないっていうのに。
『……そっちに居ないことは分かってるわ。私でさえ彼女を見つけられないもの』
エレナ、君は本当に何をしているんだい?ポーラが探し出せないって大変なことじゃないか。
ポーラのテレパシーが届かない場所……そんなに遠くにいるのか、あるいは。
『私にはただ祈ることしかできないけれど……彼女を見つけて。世界を救うためにはあの子が居ないといけない気がするの』
僕もそう思う。心の中で呟き夢の中の自分の目を閉ざす。
……世界が救われるまであいつが見つからなかったら自分はどうなるんだろうか。発狂はしないんだろうけど、やっぱりあいつにはなるべく近くに居て欲しい。
『そして、忘れないでほしいの。……世界を救うのにあの子が必要なのと同じくらい、彼女もあなたを必要としているの。エレナを見つけたらジェフ、あなたが先に話しかけてあげて』
そして、次にポーラから出たのは予想外の言葉。
僕を必要とする?……あいつが?
幼馴染としての特権だろうか、僕はいつのまにかあいつにとって大切な存在になっていたようだった。
僕はポーラの言った言葉を反芻し、噛み締めるように頷く。夢の中の僕は微動だにしなかったけれど。
『忘れないで、エレナもあなたを探しているはずだから』
つまりは、僕とあいつはもしかしたら結ばれるべき運命なのだろうか。だとしたら僕はどう動けばいいんだろう。
残念ながら人間関係にはかなり疎いもので、それ故経験がないからこれからどうすればいいかが全くわからない。
ただ、なんとなく一瞬だけ、笑顔のエレナが瞼に映った気がした。
そして、よくわからぬまま夢は消えた。
(9/12)
title bkm?
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