「――!」
無機質な放送音。得体のしれない人物の声が突如デパートに響いた。
「お呼び出しを申し上げます。オネットからお越しのネス様、それからウィンターズからお越しのジェフ様……お友達のポーラ様とエレナ様が4階の事務所でお待ちです。クケッ」
思考が一瞬で止まる。――待て、エレナが攫われた?
「エレナ!おい、どうせ何処かに隠れてるんだろ!エレナ!」
「落ち着いてジェフ!確かにポーラも居ないし周囲に彼女たちの気配は無い。……どうやら本当みたいだよ」
嘘、だ。
……あの野生児が、そんないとも簡単に攫われるなんて。
「取り敢えず上に行くしかない。行ってみよう」
「うん……」
急いでエスカレーターを昇り直す。さっきまでは居なかったはずの敵が物凄く煩わしい。こっちは急いでいるのに。
ちなみにどうして僕がこんなにエレナを気にしているか。答えはとても単純で、短絡的に言ってしまえば僕はあいつのことが好きだ。……幼馴染としてではなく、当然恋愛的な意味で。
なのに相変わらずあの野生児はそこら辺について全く興味は無さそうな上にあの適当気質だ。僕の心を読めばいずれは分かるんだろうけど、多分あいつのことだからそれは多分しないだろう。なんとも面倒な相手だ。
「……ジェフ、なんでそんなに気が立ってるの?」
「細かいことはどうでもいい、助けに行くならさっさと行かないと」
気付けば既に四階。ペンシルロケットと銃を乱打して蹴散らしまくっただけあるよ。
意識を尖らせ、僕らは雑魚の群を避けるためにスキップサンドを食べて事務室へ走った。
(8/12)
title bkm?
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