「変わっていないんだな」(あやクル)


しとしとしと――
しとしとしと――

「雨、止まないね」
「……」
「……止まないね」
「……」
「おーい、聞いてる?」
「五月蝿い」

いつも通りの他愛もない会話。
そんなことに対し、くすっと笑いを漏らす。
聞こえてしまったのか、睨んでくる。
まぁ、あやクルのいつもの態度には慣れてしまったけれど。
もう一度見たら、本に目を落としていた。



しとしとしと――

雨は上がりそうにない。
だけど雨の日は嫌いじゃない。
もちろん、理由はある。

「おーい、メガネ掛け機ー」
「……なんだ、その呼び名は」
「えっ、メガネが本体じゃないの?」
「当たり前だ」

そういって本を探しにか、本棚へと向かう。
なんで、真面目に受け答えするかなあ。
あやクルが百科事典を抱えながらこちらを見ている。

「おい、その『メガネ掛け機』とやらは、機械なのか?」
「そうだよ!というか、それすら存在しないと思うよ!?」



しとしとしと――

雨雲が空を覆い尽くしている。
相変わらず、風景は変わらない。
ちなみにあやクルは別の本の世界にのめり込んでいるようだ。

「いつになったら止んでくれるんだろうね」
「…………さあな」
「何故間が空いたし」
「……」

だめだ、本当にのめり込んでいる。
これは誰の助けを借りてもダメだろうな。
……暇だし、シグでも引っ張ってくるか。



しとしとしと――

止みそうで止まない。もどかしい。
どうせ暇になると思って、シグをつれてきた。
本人は相変わらずの表情をしている。

「あー」
「あやクルー連れてきて見たー」
「そうか」

コイツも相変わらずか。まぁ、いいか。

「ようし、シグ。ぷよ勝負だー!」
「ぷよで勝負だー」
「おい、ここを散らかすなよ」



「あー、残念」
「勝ったのか」
「相変わらず騒がしいな」
「相変わらずなのはどっちだよ」

ふとカレンダーを見る。6/16という日付。

「ここに、キッチンってあったっけ」
「ここを出て真っ直ぐ行き、向こう側の階段を目印に東だ」
「ずいぶんとアバウトな説明ですね」
「何やるのー」

お楽しみ、とだけ言って書斎を後にする。
どうせ材料は揃っているんだろうし、手が汚れにくいカップケーキでも作るか。

雨が少し止んできた。



「二人ともー、カップケーキだよー」
「わーい」
「……何でいきなりそんなモノを作った」

シグを連れてきて正解だった。
二人の前に置く。ついでに紅茶も入れる。

「ハッピーバースデー。シグ&あやクル」

突然のことに驚いたのか、二人は呆然としている。
すぐにシグが、「ありがとう、フェノ」という言葉。
あやクルは黙っていたがすぐに、「一応礼を言う」とだけ。
これを素直じゃない、って言うんだろうな。
あやクルが紅茶を飲む。

「相変わらず、変わっていないんだな」

はいはい、私がこんな事をするくらいお見通しだったのでしょう?
そうじゃなきゃ、本当に材料を用意してあるはずないよね。

まぁ、二人とも喜んでいるし。よかったよかった!

空は嘘のように晴れていた。



==========
誤爆していたことに気がつかなくて涙目の私です。
混乱させてしまってスミマセン。
本当は早めに投稿する予定だったのに、ここまで引き延ばした結果がこうなりました。
なにはともあれ、シグとあやクル、ハッピーバースデー。


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(6/7)
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