レムレス


「こ・ん・に・ち・わ♪」
「ひゃっ!?」

耳元でそう囁かれ、驚きのあまり私の身体は大きく跳ねる。
そして立ち上がり後ろを確認しようとする私を、彼は抱きしめる。
間違いない。犯人はレムレスだ。

「レムレス……驚かさないで下さい」
「ふふふ。びっくりしてくれたなら嬉しいな」

嬉しい、ってそれはつまり私の嫌そうな顔を見るのが好きなのか。つまりあなたはサドなのですかそうですか。
……うわあ、いい迷惑だなそれ。
彼はそんな私の思考を無視(そろそろ伝わらないけど)して髪をひたすらもふもふと軽く弄り、手で梳いていた。その感覚が妙に優しくて心地いいから困ったものだ。
何が困ったかっていうとまあ……ねえ。
なんというか、早く離してほしいのに胸がやけにドキドキしてもっと一緒に居たくなってしまうんだ。
私に薬でも盛ったんだろうか。もしくは魔法でも。
いやそれは多分無い。はず。

「……で、今日は何をしに来たんですか?」
「なんでだと思う?」
「質問に質問に答えるのってどうかと思います?」
「当ててごらん。正解したら素敵なお菓子をあげるよ」

素敵なお菓子。いつものお菓子と何か違うんだろうか。答える気無いけど。
……無いけど、その意味ありげないつもより数倍嬉しそうな笑顔がものすっごく気になる。

「あの、レムレスさん体重掛けないで下さい結構重いです」
「ナマエがさっきの質問に答えたらね」
「えー」

自分に圧し掛かる重圧(そんなに重くないけど)と質問。正直なところ今回ばかりは彼に負けなければいけないようだ。
確かにどうせこの人はすぐに退いてくれるだろう。
……でもさ、今宿題中だったんだよね。重くて集中できないよ。
ということで仕方なく溜息を吐いて考えてみる。今日は2/14……2/14……約分すると1/7、殆どの学校での冬休み最終日。関係無いだろうけど。

「うぎぎ……分からん」
「ヒントは2/14、大きなイベントがあるんだ。それはとーっても甘いんだよ」
「残念ながら甘い日なんてあなたのせいで何日もあるので何のヒントにもなりません」
「そう……かな?」

絶対確信犯の癖に。呆れて溜息をもう一度。
大きなイベント、2/14、とっても甘い……?

「分からないの?ナマエ」
「残念ながら分かりませんね」

答えが待ちきれないのか、レムレスは耳元でさっきより吐息混じりに囁く。とってもくすぐったい。
分かった、もう降参。早く答えを教えて。でも圧し掛かり続けるのはやめてよ集中できないから。
左手をひらひら振りながら言うと、彼はいきなり私から身体を離す。
そして、満面の笑みで「仕方ないなあ」と一言。

「じゃあ、ちょっと早いけど答え合わせだよ」
「合わせる答えも無いんですけど」

レムレスはにっこりと笑い、何処からともなく杖を取り出し魔法を――


「――ハッピーバレンタイン、ナマエ」

刹那現れたのは、いつも通りハタ迷惑な巨大なお菓子……ではなく、両手に収まる程度のハート形のチョコレートだった。
それはご丁寧にリボンに包まれ、魔法のせいか自ら輝いているようにも見える。
バレンタイン……成程、レムレスにピッタリの行事だね、確かに。

「実はね、僕はナマエのことが好きなんだ」
「そうですか、今日はいつもより小さなお菓子でよかったで……はゐ!?」

……からの、告白。一瞬おふざけかと思ったものの、レムレスの顔はいつもより真面目に見えた。
どうしようなにこれはずかしい。緊張と驚きと喜びとその他モロモロの感情が大量に溢れだして顔が熱くなる。まさかいきなり告白されるなんて。

「え、あ、あの、その、えっと、」
「返事はそのチョコレートを食べてからでいいよ。ほら、ラッピングリボンもちゃんと食べれるからね」
「それラッピングって言うのか……」


……たまにはこんな日があっても、まあいいかもしれない。たまに、だけだけど。
さて、告白の返事はどうしてやるべきか。



……………………
ということで私(十円玉。)verのレムレスさんでしたとさ。
上手くまとまらなくて伸びてしまった。よくあることだけど

prev next


(4/7)
title bkm?
home





×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -