安藤りんご


※男主です。


「なぁ……りんご?」
「はい、何でしょう?」
「何で今時期になってこたつに入っているんだ?」
「……ダメですか?」
「いや、ダメとは言わないけれど」

俺はそこでカレンダーに視線を移す。
『2/14』である。
一般に、バレンタインとかいう日だ。
まぁ、この世界……プリンプタウンにそんな行事があるとは考えにくいが。
相変わらず、りんごもこたつで丸くなってるし。
……お前は猫か!

しかし、今日は驚いた。
その性格からいかにも、『私、恋とか無縁なんです』オーラを出している彼女が!
今日!ついさっき!!俺の家を訪れて!!!

「ナマエくん、今日はバレンタインですよね?」


――そんな言葉が聞こえるとは夢にも思わなかった!!――


一瞬だけ、自分の耳を疑ったくらいだ。
それでも聞き間違いじゃないのが何とも不思議すぎる!
夢かとも思った。
頬をつねっても痛いだけだった!!

考えたり、動揺したりしても仕方がないと感じた俺は、彼女を家に入れた。
何せ季節は冬。寒そうだからな。
持っていた紙袋もしっかり抱えていたし。

……余談だが、いつも一緒にいるでこぼこな三人組はどこかに行ったらしい。
珍しいこともあるものだ。



「ナマエくん?大丈夫ですか?」
「あ、あぁ、ごめん。ボーっとしてた」

ヤバイ。だが落ち着け、自分!
りんごに心配をかけられるとは!
そんなことで動揺するな!
変な目で見られたらきっと迷惑だろうに!!
自分でも訳が分からないことを思っていたとき、笑い声が聞こえた。
この部屋には俺とりんごだけ。つまり、声の主は言うまでもない。

「ナマエくんって、表情がコロコロ変わるから……分かりやすいです!」
「えっ!?そんなに分かりやすい!?」
「ええ、それはそれは一人何役もしているような!」

そんなに分かりやすく見られていたのか……。
ってことは、今までのことも全部だろうか。
そんなことを考えて、ちょっと自分が悲しくなる。

「あ、忘れるところでした。ナマエくんに渡したいものがありまして」

そういって、先ほどから気になっていた紙袋に手を突っ込む。
ちょっと難しそうな顔をしていたが、すぐに笑顔に戻る。

「ねぇ、ナマエくん」
「何だ?」

そして、後ろに隠していた手を思いっきり、俺の方につきだしてきた。
……あと数ミリで腹に直撃だぞ!?
んで、何をつきだしてきたって……え?

「ナマエくん、先ほど私は貴方に日付を聞きました。そして、今持っているモノ……
 もう、意味はおわかりですよね?」

彼女が持っているモノ……それは赤い袋にラッピングされている、チョコレート。
2/14……チョコレート………。

そこで俺は瞬時に状況を理解した。
ついでに『ハッピーバレンタイン』とラッピングカードに書かれているのも理解する。
顔中がほてっていくのを思いっきり感じ……って何やってんだ、俺!

「ふふっ」

鈴が転がるような、小さな笑い声が聞こえた。

「やっぱり、ナマエくんの表情がすぐ変わって……分かりやすいです!」

まぶしい笑顔が目に焼き付いて、すぐには離れなかった。



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というわけでりんごver.(×の人)です!
何故、男主か……それは私の独断と偏見でああなったということだけ。


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(2/7)
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