おもちゃ箱


僕の家には壊れた人形がある。正確には壊れたとは言わないかもしれないけれど少なくとも人形と呼べなくなった人形が。
それは完全自立型オートマタ、けれどもコンピュータによる人工知能に沿って予め決められたことしかできない設定だ。そのはずだった。
けれどそれは違った。その日突然壊れたそのオートマタは僕に喋りかけたんだ。

『私は生きている』

何のことだかさっぱり分からない。人形が生きている?嘘はやめなよ。
一瞬そう思ったけれど、次の瞬間僕は固まった。そんな言葉、このロボット……もとい人形が喋る言葉ではない。
それは女の子の姿をしていて、微笑みながら僕に話しかけてきた。

『ねえ、私は誰?』

これには驚いた。キミは誰、そう言われるのはまだ分かる。でも私は誰、と聞かれるのは初めてだ。僕は噴き出した。
だって。信じられるか?オートマタのくせに、ただの自立人形のくせに、自分の名前を考えろとご主人さまに向かって言ってくるんだ。
仕方ないから僕はそいつに「ナマエ」と名付けた。理由?そんなもん適当に決まってるじゃないか。
ただふと思い浮かんだから。それだけだ。

それからもその自立人形はがしゃんがしゃん言いながら僕のために色々としてくれた。
正直そこらへんのメイドよりよく働いていたと思う。
機械だから疲れないし壊れても直せばすぐ元通り。ナマエは僕の専属メイドとしてよく働いてくれていたよ。
……でも、それは突然に終わる。
ある日ナマエと一緒にリビングで遊んでいたら、突然プツンという何かの破裂音。
刹那、彼女は動かなくなった。真昼のことだった。
彼女は元に戻った。人形。プログラミングされたことしかできないただのオートマタに戻ってしまった。僕は笑った。笑った。泣いた。


なぜナマエが突然意思を持つようになったのか。そんなこと僕が知る訳がない。
ただ、思うんだ。あいつはあいつなりに僕に何かしたかったんじゃないか、と。
……はは、僕にしてはかなり幼稚な考えだけどね。
でも――それでも。



彼女に貰った小さな僕のぬいぐるみは、まだ手放せない。


……………………
そんな、掃除中に浮かんだお話。
最初は主人公も機械を持っていたのも女の子だったけど気合いでこうなった
あと信じられるか……これ執筆に十分も掛かってないんだぜ……どうりて適当なはず

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(20/31)
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