Chapter.15


屋上にたどり着くと、やっぱりクルークはそこにいた。

「遅かったじゃないか、ナマエ」
「ごめん、アコール先生の抜き打ちテストが入ってきて……」
「だから下の方で物音がしたのか」

納得したのか、黙り込む。
さっきまであった物音も、嘘のようにかき消されている。
驚くほど無言の時間が流れていった。
クルークも珍しく黙っており、私の前を見ている。

どのくらい時間がたったんだろうな。
一分かな。十分かな。一時間かな……流石にそれはないか。
むぅ……この間、本当にどうすればいいんだろう。

「ナマエ」
「うわぅ!?」

変な声を上げ、クルークの方を向く。

「返事。まだかい?」

あぁ、私から喋らなくちゃいけないんだ。
返事をしなくちゃ。
心臓がうるさい。
クルークに聞こえてないよね?

でも、もう迷ったりなんかしない。
大丈夫!言える!!

「クルーク」
「なんだい?」

「私はクルークと……」
「僕と……?」
「ずっと……」



――ずっと……――



「な……!ど、どういうことだい!?」
「はいっ?」

何で慌てているの?
私、変なことでも言った?

「だから、『友達でいたい』ってことだよ!」
「嘘っ、そう言った!?」

身に覚えがない。

「もちろんだよ!」
「違うよ!私はクルークのことが好きだって……!!」
「言ったね?」

目の前の秀才は笑っている。楽しそうに。晴れやかに。
見事に言葉の罠にかかったよ。
それにしても、ちゃんと言ったよ。
クルークのことが好きだって。言ったよ!

「クルーク、これで納得したかな………っ!?」

急に喋れなくなった。
体も動かない。
あぁ、そうか。


クルークに唇をふさがれたんじゃあ、どうしようもないかな。


静かな屋上。
一つ、心の階段を上った気がした。


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