Chapter.8


私は一人で屋上にいた。
さっきのことを考えるためだ。

さっきの授業の時、なぜ、私はクルークの方を見ようと思ったのだろうか。
今までこんな事は一度たりとも無かった。
普通にクラスの一員として見ていたのだと思う。
それなのに。
さっきの行動は明らかに違う。
今までとは違う、何か。
なんだろう。

「あーもう!調子狂う!!」

そんなことを言ってもむなしく木霊するだけだ。
分かりきっていたはずなのに。
無性に叫びたくなった。
自分でもよく分からない。
これは自分だったっけ?
ココにいるナマエは本当にナマエだったっけ?
自問自答したって答えは見つからない。
不思議だなと思う。
こんな事を考えている自分が不思議だな、と。

「はぁ……」

溜息をついて、屋上のコンクリートに寝転がる。
ひんやりと冷たい。

それにしても、クルーク。
今、何をしているのかな……。
クルークのことだ。今頃図書室にいるんだろうな。
そう思ったとき、私の頭の中に、メガネの奥で光る目を動かし、
図書室の本棚に並べられている本の背表紙を見ているクルークの姿を思い浮かべた。
きっと、数冊の本を抱えているんだろうな……重そう。

――あれ……?――

私、何でクルークのことを考えていたんだっけ!?
自分の顔がほてるのを感じる。
あぁ、私のバカ。
こんなのクルークに見つかったら、指摘されるんだろうな。
『顔が赤いけれど、しもやけにでもなったのかい?』……みたいな。
絶対言う。
何となくだけど、絶対言う。
あぁ、また私は……!?

「……ナマエ」
「はひっ!?」

急に名前を呼ばれて返事をしたはいいけれど、咬んだ。痛い……。
顔を上げると、本を抱えたクルークが立っていた。
やっぱり図書室にいたんだろうな。

「クルーク?どうしてここに……」
「廊下が異常に寒かったからね。誰かが屋上にいるんだろうな、と思ったからだよ」
「それで、見に来たってこと?」
「そういうことだね」

そう言って屋上のコンクリートに座り込む。

「そういえばナマエ………寒くないのかい?」
「まーね」
「まったく。風邪をひくかもしれないのに」

そういって空を見上げる。
その時、何か白いモノが私の顔に触れた。
クルークもそれを感じたのか、顔に手を当てている。

「見て!雪だよ!!」
「本当だ……今年はじめてみたよ」

白いモノ……それは雪だった。
真っ白い雪。
それは空中に、そして鮮やかに、舞っていた。
私はクルークと一緒に、ずっとそれを眺めていた。



チャイムが鳴った。
あまり長くない時間だったけれど。
何だかとても楽しい気分だった。

「ナマエ、時間になった。僕は先に戻っているよ」

そう言って本を抱え、屋上から出ていった。
その後ろ姿を、私は消えてしまうまで見ていた。



「ナマエ、顔が赤いけれど、しもやけにでもなったのかい?」
「えっ」

やっぱり突っ込まれた。



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大雪なう。
寒い、足が。


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(10/19)
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