05


「では、私は古文のコーナーに居るからな」
「はいはい」

あやクルはそう言って、私と別の方向へ軽い足取りで歩いていく。
やっと面倒なのが居なくなった、と溜息を吐いて私は何事もなかったかのように図書館を出る。

……気付けば、こいつと出会って一週間が経っていた。

「あ、ナマエー!」
「シグ、アミティ……お疲れ」
「ナマエもね。あやクルに引っ張られてばっかりでしょ?」
「まあ、うん」
「ムシだー」

相変わらずあいつはしつこい。お陰様でちっともクラスメイトと話せやしない。
出来るのは奴が図書館で本に夢中になっている、この時間くらいか。

「でね?そういう時に限って今日は二人で補習。図書館に行くって言い出してくれたのがせめてもの救いかな」
「へえ……そんなに大変なんだ」
「助けてアミティ。私このままだと本気で洗脳される」

そう言いながら、近くにあった椅子に座る。
おかしいな、ちょっと前まで私普通の本読みだったのに。
なんであんなに独占欲の塊みたいな魔物に取りつかれるようになったんだか……
でもまあ、あの人が図書館に入ったならそれも一旦関係無くなる話。
あいつは一度入ったが最後、必ず閉館時間まで引き籠って出て来ない。
つまり、今の私は自由の身だ。ああなんて素晴らしいんだろう。これが普通のはずなのに。
あいつのせいで多少テンションが可笑しくても話せればどうでもよくなっちゃったし。相当疲れてるんだな私。自嘲しながらもう一度深い溜息を吐いた。

「ナマエ、大変だねー」
「大変だー」
「わあ他人事。あんたら私と立ち位置交換してよ」
「いや、それは嫌かな」
「嫌だー」
「ですよねー」

わーいシグもアミティもそんなに他人事にしないでよもう。
私だって好きであんなのと絡んでる訳じゃないのに。どうしてこうなった。
そもそも私はな……口を開いたその時、ふと図書館閉館のチャイムが鳴る。
あ、やべえ早く戻らないと気付かれる。

「あ……じゃ、またねアミティ、シグ」
「え?あ、うん!」
「いくのかー」

私は油断しきっていた。どうせあいつは本の世界を満喫しているのだろう、と。
でも、彼はどうやら私の姿を見てしまっていたらしい。
私とアミティ、それからシグと話す姿を。

「……私以外の者と話すなとあれほど言ったというのに」


俺達の悲劇はここからだ!(白目)

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