04


チャイムの鳴り響く教室。
今日もボーっと過ごしてしまった、と少し後悔するこの時間。
……放課後だ。

「んーっ……はあ」

また授業で寝ちゃったな……別に予習してあるからいいんだけど。
大きく伸びをし、机の中の荷物を手早く鞄に移す。
そういえばあの五月蝿い魔物の声がさっきから聞こえない。何をしてるんだろう?
隣の席をちらりと見てみると……机に突っ伏して眠っていた。
今のうちにこっそり帰ってしまうべきか、それとも起こしてやるべきか。
悩みどころだ。正直どちらでも後に弄られることに変わりは無い。個人的には解放という選択肢が欲しいわけだけどそうはいかない。絶対いかない。

「……逃げよう」

結局私はそう悩むことなく、前者を選択する。
理由は特に無い。強いて言うなら運が良ければこのまま解放されるかもしれないという皆無に等しい運に賭けた、それぐらい。
そうと決まれば急ごう。こいつが起きる前に帰るんだ。
逃げる途中で服を掴まれるという危険も、遠回りで教室を出ることで回避できる。
これもアミティとの追いかけっこの賜物だ。あんなに嫌だったけど今なら感謝できるよ。

「よっ、と」

足を地面に付けないよう、微かに浮きながら出口へ急ぐ。
音を消す魔法ならそれなりに得意。私は前のドアから難なく脱出に成功した。
良かった、これであやクルから逃げられ――「私から離れようとするとはいい度胸だな」
……そうでもなさそう。



ちゅ、甘いリップ音が響く室内。
もう嫌だ。逃げたい。本気で逃げたい。助けてクルーク。

「うみゅ、もうやめてよあやクル……」
「無理だな。私から離れようとした罰だ、たっぷり味わってやる」

彼はそう言って、また首筋に歯形を作る。
痛い。痛いのに、どこか気持ちいい。その感覚がむしろ気持ち悪い。
そんなよく分からない感覚を受ければそれだけで混乱するというのに、この状況は反則だ。
甘い。とことん甘い。
至る所にキスが落とされ、その度に私の身体はゆっくりと染められていく。
抵抗しようとしても無駄だった。「この私が今更止めるわけがないだろう」とか言って手足の動きを封じられた。
むしろそんなことをしちゃ駄目だったんだろう。多分余計にこいつを暴走させるだけだったんだ。
ああ、私って馬鹿だ。冗談抜きの本気で馬鹿だ。
こういう私の悔しがる顔も、多分こいつにとってはデザートのようなものなんだろう。
誰かこのドSもう一回封印してください。本気で。

「フッ、夜はまだ終わらないぞ」
「ねえまだ夕方なんだけど」

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(6/14)
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