03


……信じられない。
彼は学校に着くなり、至る人から「おはよう、あやクル」と声を掛けられていた。
流石記憶操作。絶対おかしいよこれ。

「うげ……」
「驚いたか?これも私の魔導だ」
「乱用したら危なそうだね、その魔導」

彼は「安心しろ、お前に害は与えない」と微笑み、机の中から早速本を取り出し読み始める。
この辺りは大体クルークと同じか。というかこの人あやクルっていう名前だったんだ。
……名前で呼ぶべきか、それとも普通に「キミ」で通すべきか。正直面倒なのは嫌いだしキミのままでいいとは思うけど。
ただ、どうやら私の意識が完全に読まれているようで「名前で呼べ」的なことを言っている感じの視線がちょくちょく隣から来るんだ。
そう考えると、やっぱり名前の方がいいのか。正直初対面の変態にそんな呼び方する筋合い無いんだけど。

「……ナマエ」
「何」
「ナマエ、ナマエ、ナマエ」
「だから何」
「さあ、私の名を呼べ。それまで私はお前の名を呼ぶのをやめない」
「ごめん日本語喋ってくれないかな」

彼はそれ以上何も言わず、ただ私の名前を呼び続けるだけだった。
何この精神攻撃。でも結構効くのがちょっとムカつく。というかわざわざ出した本しまってまでしてするなよそんな攻撃。
……いや、駄目だ。今奴の名前を呼んだら完全にこれの言いなりになってしまう。
でも名前を呼ばれ続けるのはやかましい。あと恥ずかしい。
たかが名前だけでここまでするのか、この魔物は。いやしてるか。してるからこうなってるのか。

「ナマエ、早く私の名を」
「断る」
「さもなくばお前の名を呼ぶのをやめない」
「安心しな、あと五回言ったらその口を封じてあげる」
「ほう、貴様からの接吻か。喜んで受けてやる」
「おい変態」

駄目だ。やっぱりこの人に日本語は通じないのだろうか。
でも折れるのは私的にちょっと……
はあ、朝からなんでこんなに下らない論争してるんだろ、私。
面倒だしさっさと楽になろうか。

「……『あやクル』」

ピクリ、彼は一瞬驚いたように身体を跳ねさせ、満足そうな笑みを零す。
これでいいんでしょ、これで。

「名前を呼ばれたいからって普通そこまでする?」
「ああ。さて次は……そうだな。今後は私を名前でしか呼んではならない、それから他の者については全て『お前』か『貴様』で統一させろ」
「ねえねえ、ここに魔物を封じる紐があるんだけどキミの本体これで結んでいいかな」

どこまで私を染めるつもりなんだ、この魔物は。
会って二日しか経っていないのに……展開とその他色々のスピードがおかしすぎる。

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(5/14)
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