01


「うぼあ!!……ってなんだ、夢か」
「夢ではない、これは現実だ」
「ひいっ!?」

……夢じゃなかった。
目の前には夢(だったもの)で見た紅い影と妖しい魔物。残念ながら昨日のアレは現実のようだった。
なんでここにいるの、この人。

「な、なんで、ここに」
「貴様、覚えていないのか?私に魔導さえも使ったというのに」
「はい?」

彼は昨日の夜にあったことを丁寧に教えてくれた。
どうやら私はあの直後、彼を置いて全速力で逃げ出したらしい。
勿論彼は私を追いかけてきた。でも完全に我を失っていた私はそれに魔導をぶち当ててしまった。しかもアルティメットクリーンヒット。
それでもこの人は追いかけてきたのか……
確かに悪いことをしたのは謝る。でもそれはそれで犯罪だよ。不法侵入とかストーカーとか。
……というか、昨日どれだけ相当な威力の魔導を放ったんだろう。
身体が、だるい。

「……はあ」
「どうした、自分の犯した愚行に呆れたのか」
「違うよ。まあ大体合ってるけど……むう」

それだけじゃない。身体の節々がとてつもなく痛い。
完全に昨日魔力を使い果たしたせいだ。今日はまだ学校に行かなきゃいけない日なのに。
というか今日が週始めだ。今日が木曜日や金曜日ならまだしも月曜日では休みようが無い。
ああ、最悪だ。

「……学校行く準備しよう」
「無理する必要は無い。今日はゆっくり休め」
「誰のせいでこうなったと思ってるの」

「さあ、な」彼はそう言って妖しく微笑んだ。
こういう人はいまいち掴めない。あともう少しのところで手が届かない。
知り合いで例えるなら……レムレス。あの人みたいなものか。
どうしてもついていけないな、ああいう人には……


……取り敢えず、いい加減準備しようか。

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