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私はすぐにそれを手に持ち、ゆっくりと表紙を開く。
ページが勝手に捲られていったかと思うと、それは中央のページで止まり中から紫色の何かが飛び出してきた。

『ナマエー!!』
「うわっ!?」

独特の秀才帽に紫色の身体。こいつ……こんなところに居たのか。
深い溜息を吐き、取り敢えずそいつを強くブン殴った。

『ひゃあっ!!』
「心配掛けさせやがって……私がどんだけ大変な思いしてたと思ってるんだよ!」

言いながら思う。私男に生まれてきた方が良かったんじゃないか?
どうせ今更思っても遅い事だが。
勢いよく吹っ飛ばされたその本は壁に強くぶつかったが、魔力のせいか再び落ちることはなかった。
クルークはものすっごく悔しそうな顔をしていたけれど、どうやら魂のまま故に反撃が出来ないらしい。今のうちに弄り倒してやろうとか一瞬思ったのは内緒だ。

「お前のせいで私はご覧の有様だよ。責任はどう取ってくれるのかね」
『し、仕方ないじゃないか!第一あれはボクが望んだ事じゃ……』
「おうおう、自分の言った事を撤回するつもりかい天才クルークさんよ。本の力を解放して自分のものにするとか言ってませんでしたっけ?」
『……』

いまいちメンタル弱いなクルーク。そしてキャラ変わりすぎだな私。
そんなこと、今更どうと言うべきことでも無いけれど。何よりよくあることじゃないか。
……主にアルルが昔居た世界では。

『と、取り敢えずだ。どうにかしてボクの身体をあいつから取り返してくれ』
「お前ついに頭が壊れたか。あの鬼畜にどうやってそんなことするんだよ」
『このクルーク様の頭が壊れる筈無いだろう!?違う……確かどこかにあった筈なんだ、一時的だけれど魂に身体を与える方法が』

彼は真剣な眼差しで呟いた。確かにどこかで見かけたね、そんな魔法。
でも、そんなことをしたらクルークの魔力が瞬く間に消費されることだろう。副作用は尋常じゃないはずだ。

「……それ、ある意味禁忌じゃないのか?」
『五月蝿い、そうでもしないとあいつからボクの身体は取り戻せない!』

それでもこいつはやる気らしい。そんなに元の体が好きなのか。
一応あいつをどうにかしたいというところで利害は一致している。
だが、これは流石にこいつの負担が掛かりすぎる。最悪死ぬ可能性さえあるというのに。
それでもやる覚悟は、果たしてこいつにあるのだろうか。

……何か、もっといい案は。
考えているうちに、奴の居ない夜の時間は終わってしまった。

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