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とは言ったものの、どうするべきか。
私は彼の居なくなった牢獄で一人溜息を吐いていた。
見上げた天井は薄暗い灰色、無機質で冷たいそれは今すぐにでも私を取り込んでしまいそう。
……これが俗に言うヤンデレというやつなのか。絶対違う気がする。

「……はあ」

もし私がこのまま此処に居たらどうなるのだろう。
答えは簡単、あいつへの服従だ。勿論そんなの断固お断りだが。
でも、可能性は無くは無い。つまりいつかは必ずこの部屋から出なければならない。
それには彼を説得する必要があるが、それははたして可能なのか。
アミティ辺りなら確かに協力してくれそうだけれど……
まあ、無理だろうな。この不可視の結界で包まれた場所へ来るなんて。

そもそも、彼はどうしてこんなに独占欲が強いのか。まずはそこから冷静に考えてみればどうだ?
それらを見つけていけばどうにかな……いや、駄目だ。それは全て『奴が魔物だから』で済まされてしまう。そしてそれ以外の理由が思い浮かばない。
かといって別にクルークが私のことを好きだった訳でもない。その、はずだ。
だとしたら、余計に分からない。何故奪われる訳でもないものをわざわざ閉じ込める必要があるのか。
……兎にも角にも、奴にはよく分からない部分が多すぎる。
聞けば話してくれるかもしれないが、可能性は極めて低い。それにそんなことしたら怪しまれるに決まっている。

ああ、駄目だ。今の私に頭脳戦なんて出来やしない。いや、元々出来る訳ではないが。

『ナマエ』

ビクン、背中が大きく跳ねる。
誰、今私の名前を呼んだのは。……いや、あいつしか此処には居ないけれど。
しかし振り返ってもあやクルの姿は無かった。じゃあそれは誰の声だ?
その声はとても小さく、そして彼の声よりずっと高かった。

『ナマエ、このボクの声が聞こえないのかい!?』

懐かしい、いかにも少年らしい声。そして嫌味の入った抑揚。
……間違いない。

「クルーク……?」
『やっと気付いてくれたみたいだね。そうだよ、ボクはクルーク様さ!』

それは、近くに落ちていた本に入っていた。

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