その4「ダスティング」


「疲れた……」
「だろうな。だがここからが本番だ」
「ですよね……や、休ませてくれは「しない」……」

もう無理。
腕が動かない。
それなのに……この人は鬼畜だ。
まだ動けと。戦えと。
確かに私がトロいのが悪いよ。そうだけどさ。
流石に二回も同じことをするのは疲れるよ……

「さっさと働け」
「誰だろうねちょっと前に自分が掃除するからお前はどっかに突っ立ってろって言ってた人」
「さあな」
「おま……」

怒りかけ、深く溜息を吐く。
だめだ。この人には何を言っても通じそうにない。
仕方なくふらりと立ち上がり、雑巾を手にとった。
……まあ、片付けが終われば本番っちゃ本番だけどあまり時間は掛からないしね。

掃除の手順その4
「ダスティング」

「で、あやクルさん。今回の作業のコツは?」
「コツなど無い。強いて言うなら上から下へやる、その程度か」
「まあ当然だね。埃は上から下に落ちる」
「それから漆塗りの家具には水ぶきはするな。……後悔するぞ」

あやクルの声に少し力が入っていたのを感じ、振り返る。
彼は明後日を見る目をしていた。
……あ、あやクルもたまに失敗はするんだ。

「棚等の上に物が置いてある場合はそれを退かしてからやれ。ちょくちょく動かすと埃が落ち、二度手間になるから色々と効率が悪い」
「はいはい」

見てはいけないところを見てしまった気がする。
苦笑しながら部屋の掃除に戻ると、そこには一枚の写真が。
幼いクルークと私と……あれ、誰だこの黒い魔導師。

「あやクルー、この写真に見覚え「無い」ですよね」

少し疑問に思いながらも取り敢えず一旦仕舞っておく。
黒い魔導師なんてどこぞの変態以外に居たっけ?

「筆立てやラックも移動させておけ。そしてその下に溜まった埃も取れ」
「ハイ質問。動かせないほど重いものはどうしますか」
「……放っておけ」

ちなみにその動かせないほど重いものとは本の入りまくったラックだ。
一冊一冊取り出してもいいけれど、このラックに触るとあやクルさん怒るからなー……
本人の前でなら別にいいと思ったんだけど、駄目なのか、これ。

「ほい、水ぶき終了。後は空ぶきで跡が残らないようにー」
「小物を戻すのも忘れるなよ」

流石に覚えてるって。



それにしても本当に人に指図するのが好きだな、あやクル。
そして気まぐれだ。

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