最近接触した人間に白石蔵ノ介という男がいる。この男、大学では結構な有名人で、家業を継ぐためこの大学に進学し上京してきたという(友人談)。顔面レベルは最高ランクでかなりのイケメン。そして関西出身なのか関西弁が目立つ。故に、甘いマスクなのに口を開けば飛び出す関西弁というギャップとやらを見出した同世代の女が群がる群がる。なんて男だと内心思った。あと女に苦労したことなさそう。

そんな男と私が出会った経緯は、よくあるありきたりなものだったので向こうはきっと私のことなんて覚えてないだろうし私も目の保養になったなあぐらいの感覚でいたのだが、向こうはそうではなかったらしい。現に今私の前方に見つけた彼の姿を遠目で眺めていたのだが、私と彼の目があった瞬間、彼は目を見開きまるで飼い犬が飼い主を見つけたときのような表情をしながらこちらに歩いてきて、私の目の前で止まり口を開いた。


「ようやく見つけたでぇ。久しぶりやなぁ、あんときのちいちゃい子」

『…よく覚えてましたね白石くん』

「そら覚えてるわ。あんだけ俺の目の前で後ろも気にせんとぴょんぴょんと飛んでたり思いっきり背伸びしとったんにも関わらず、目当ての本に一切届かへんかった子ぉやで?」

『…あの、遠まわしに小さい言わないでもらえませんかね、一応気にしてるんで』

「あぁ、そうだったん?堪忍な」


初めてまともな会話をしているというに、まるで旧知の仲であるかのようなフレンドリーさ。いっぺん締めてやりたい。


『で、用件はなんでしょうか』

「用件?いやー、そんなん特にあらへんけど、強いていうならあんたともっぺん話してみたかってん。ほら、あんときは業務的な会話やったやろ」

『はあ』

「コイツ絶対おもろいやつやって思っててんけど、本に取ってやったあとすぐ図書館出てってもうたやん」

『そうですね』

「せやから話しかけにきたんよ。あっそういや話変わるけどあんた俺の名前知ってたんやね、嬉しいわー」

『えっ今更つっこむのそれ』


この会話が始まった頃の会話を今更掘り返してくるなんて思いもしなかったためうっかり素で返事をしてしまった。私人と慣れるのに時間がかかることで定評があるのになあとも思った。いわゆる人見知りってやつである私の素をうっかり出させてしまった関西の話ふ術こわい。というか白石くんこわい。何者。


「おお、敬語やなくなった。無理せんでタメで話してくれてええでみょうじさん」

『いやでもまだ慣れてないんで、ってえっ、名前』

「?知っとるよ?」

『さっきまであんたとかコイツとか言ってたのに名前知ってたんですね』

「そらみょうじさんが俺の名前知っとるのに俺だけ知らんのはなーんかちゃうやん?っちゅーかで敬語に戻っとるでー。タメでええって言うたのに。」

『いやそこは気にしないでくださいよ。癖なんです癖。そういうことにしておいてください』

「えー」


結構テンポよく進んだ会話だったがほぼ初対面に近い人との会話に自分が思っていたよりも疲労を感じていたらしく、なんだか頭が痛くなってきた。それに丁度よく会話がきれたのでこの辺でおいとまさせてもらおうと口を開いた。


『あの、白石くん、私そろそろ行かないといけないんだけれど、続きはまた今度でどうですかね』

「ああ、そうなん?ほんならまた今度話そうや。ついでに連絡先交換してもろてええ?」

『ああ、はいそうですね』


互いに連絡先交換のため文明の機器である携帯電話を取り出して連絡先を交換する。その際白石くんの携帯を眺めたのだが白石くんは今流行りの外国に本社がある林檎のマークのついた白いやつで、カバーもスタイリッシュでシャレオツなものを付けていた。さすが有名人、流行りには乗っておくかの精神なのであろうか。ちなみに私は今まで契約するときに、きのこのストラップが貰える携帯電話会社が販売している小型のタブレット端末から林檎のマークのついたやつに変えることが出来たため、ものとしては同じものの筈なのにこんなにも違く見えるのはやはり持ち主によりけりということなのだろうかとすごく思った。


「ん、終わったな。ほんじゃ、あとで連絡するわ」

『あぁ、はい。じゃあまた』


こうして白石蔵ノ介は私のなかで最近接触した人間から知り合いというカテゴリにランクアップしたのであった。てってれー!

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方向性が迷子になりました。友人にあげたものを少しリメイクしてあります。




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