春の、よく晴れたあたたかい日のこと。ある教会ではいわゆる結婚式というものが行われていた。この結婚式に呼ばれた新郎新婦の身内やクラスメイト、お互いの友人達、知り合い達がざわつく中、式の主役である新郎新婦は控え室にてしばしの談笑を楽しんでいた。


「なまえ」

『なあに?』

「……あー……その、なんだ、似合ってる……」

『ふふ、ありがとう。そっちもなかなか似合ってるじゃんさっすが影山くん』

「……………………」


新郎である影山飛雄が言い慣れぬほめ言葉を口にするも新婦であるみょうじなまえはその言葉に表情を緩ませつつ彼に対してのほめ言葉を送った。


『でも似合ってるじゃなくてもっと別の言い方をしてほしかったなあ』

「………………ちっ」


彼、影山飛雄という人間は人をほめるというような行為が苦手であり、そういったことをあまり口にすることはほとんどないことを知っていたなまえは今回のような人生の晴れ舞台にそういった言葉を途切れ途切れ途切れでも言ってくれたことを素直に嬉しく思った。だがどうせならもっとちゃんと言ってほしかったという願望があるのは仕方のないことである。少し言いすぎたかと思ったがいつもこんな感じだし、いいかと思い直したなまえだった。


『きっと招待状が来たときみんな驚いただろうねー』

「……そうか?」

『そうだよ、だって高校生のときはそんなに仲良くなかったじゃん。出会いは高校だけどよく話したり遊ぶようになったのって私が大学生のときだよ?』

「あー…そうだったっけ」

『そうです!いきなり影山から連絡きたとき誰だっけこいつって思ったもん』

「……てめえそんなこと思ってたのか」

『まあそのときはね。まさか結婚することになるとは』


今はちゃんと好きだし、だからつきあったしプロポーズも受けたんだからね?となまえが影山の顔を見ながら言うと影山は頬だけでなく耳まで赤くした。


「つうかお前いつまで俺のこと名字で呼ぶつもりだよ」

『え』

「いい加減名前で呼べ」

『えっ…いやあの、まっまだいいんじゃない……?だめ?』

「ダメだっつの。ほら呼んでみろよ」


地味に復讐してきたなこいつ……と赤くなってきた自分の頬を触りながらなまえは思った。だが実際になまえが影山を名前で呼ぶことは少なく常に名字呼びだったため今更名前で呼ぶことが照れくさく感じているのを影山本人はなんとなくわかっているからこそこの復讐なのである。これで呼ばなかったら最終手段があるしなと気楽に考えているがなまえは名前で呼ぶことを躊躇していた。


『と、とび、ととび、とび…』


なまえが影山の名前を呼ぼうとして数分がたったが一向に呼ぶことが出来ていないため影山は最終手段を出すことにした。なまえを軽く抱きしめ、耳元に口を寄せてある言葉を囁くとそのまま耳元に口付けをして自分の控え室へと戻っていった。なまえは式場スタッフが呼びにくるまでのあいだしばらく身動きを取ることが出来ずにいたのであった。


「お前は今日“影山”になるからこうして俺のために綺麗になったんだろ?」


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爆発しろ




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