バイトが終わって事務所を出る。今日も疲れたなぁ、明日はきっと筋肉痛だわと思いながら歩いていると視界に見覚えのある黒髪に黒いジャージ姿が入ってきて。目が、合った。


『あ』

「……」


男子バレー部の影山飛雄くん。私と影山くんはおんなじクラスで少しだけ話したことがある。いわゆるただのクラスメイトな関係だが見かけたうえに目まであったらなんだか声をかけずにはいられなかった。


『……部活帰り?』

「……おー。そっちはバイト?」

『そうそう』


そうして私は影山くんの隣に並んで歩いた。彼の隣に並ぶとき少しだけ迷ったけど影山くんはそんなに気にしてないみたいだ。よかった。


『部活かー、私もどっか入ればよかったかなー』

「あぁ、みょうじって帰宅部だっけ」

『そうだよー。でもなんか高校でも続けられる自信なくって』

「ふーん……中学んときは何やってたんだ?」

『一応吹奏楽をね』

「あー、なんか言われたらそうっぽいな」

『よく言われるー』


そんな他愛もない会話をだらだらと続けながら歩いていると丁度曲がり角に差し掛かるところで、私はここを右に曲がらなくてはならないので影山くんが右に曲がらない限りここでバイバイとなる。もーちょっと会話したかったけどまあ別にいっか。


『じゃー影山くん、私ここ右だから。バイバイ』


私は別れの挨拶を口にする。すると影山くんはなんかすごい目付きで私を見ながら曲がり角を右に曲がって。


「……あのさぁ、もう四月だけどこの時間帯はまだ薄暗いのに一人で帰ろうとか思ってんの?お前ばか?」

『ええ?なんで私ばかとか言われたの意味がわからん』

「……はぁ。いいから早く歩けよ送ってくから」

『いやだからさっきバイバイって言った……』

「んだよ。さすがにこの薄暗い中、女を一人で帰そうなんて思わねーよ。黙って送られとけ」


さっきよりもゆっくりと歩き始めた影山くんに追い付くため少し早めに歩く。なんか有無を言わせてくれないまま送られて帰ることになったが、これってもしや青春のはじまりとか言うやつなのでは、となんとなく思った四月中旬の夕暮れ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
季節感がないのは仕方がない←




「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -