約一月ほど前に出来た義弟に“なまえ姉さん”と呼ばれるようになり、私も彼のことを“作兵衛”と呼ぶようになってからしばらく。私と作兵衛の距離は少しずつ近づいてきた、ような気がする。とは言ったものの接し方などに変わりがあるわけではなく、なんていうか雰囲気って言えばいいのだろうか、そういうものが近くなったようなそんな感じ。だいぶ仲良くなれたし最近は本当によく話すようになった。出会った頃のようなぎこちなさはもう見当たらない。おかげで新婚旅行から帰ってきた二人に随分仲良くなったんだね、みたいなことを言われて互いに顔を見合わせて笑ったことは記憶に新しい。

まあ仲良くなった分私の気持ちもどんどん大きくなる一方で、いつまで気づかれずに過ごしていけるのか不安になってどうにかしてこの気持ちを消さなければと作兵衛に対して少し素っ気ない態度をとってみたりとかしたのだがそれも「なんで最近俺に冷てえの」っていう作兵衛の言葉により撃沈。……はあ、好きだけど辛いとはまさにこのことか。義理とはいえ私と作兵衛の関係は一応姉弟でこの関係はどうにも出来ない。一体どうすればいいんだい、なまえさんわからないよ。


「……ねえさん?なまえ姉さん?」

『…………さくべー?』

「そう俺。ただいま。なんでソファで寝てんだよ風邪ひくぞ」

『……あーさくべーおかーりー……まじでかー……』


どうやらいろーんなことをぐだぐだぐだと考えているうちに私はソファの上で寝てしまっていたようだ。なんてこったい。室内はもうすでに暗くなってきており少し肌寒い。そういや母は仕事で帰りが遅くなるってメールが来てたな。…ああそうだ夕飯の準備をしなくちゃ、と思いソファから立ち上がろうとすれば私の後ろにいたらしい作兵衛に両肩を捕まれて何事かと驚く。そうしてそのままソファに座らせられてしまった。


「なまえ姉さん座ってろよ今日は俺が作る」

『っへ』

「なーんかなまえ姉さんボーッとしてるみてえだし?そんな状態で台所立って怪我されたらたまったもんじゃねえからな」

『うええごめんなさいお願いします』

「ん、いーよ別に!俺がしたいだけだし」


そう言って作兵衛は歯を見せてにいっと笑った。急にそんな顔を見せられてしまい私の思考は一時停止。思わず顔に熱が集まってくるのがわかった。くそう不意討ちだ。不意討ちでそんな笑顔を見せてこないで欲しかった。私の身が持たない。そんなこんなで今日は作兵衛くんの手料理が夕飯になりました。私が作るよりもだいぶ美味しかったんですがこれどうすればいいんです?私完全に負けたんですけどどうすればいいんです?


Hello, my brother!





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