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母が再婚し、義理の父と弟が出来て一緒に住むようになり早一月がたとうとしていた。一番最初に出会ったときに私が作兵衛くんに惚れるというあってはならないような出来事があったわけだがそのことに誰かが気づく、ということもなく至って普通に平和に過ごしていた。私も極力顔に出さないように気をつけていたし、そもそも改まって話すみたいなことは一切無くて「まあこれから一緒に住むわけだしゆっくり知り合っていけばいいじゃないか」という義父の考えもあってのことだったし、そこはラッキーだったかな、と思っている。
と、そこにパジャマ変わりのスエットを着て寝癖で髪の毛がところどころ跳ねている作兵衛くんが二階から降りてきた。
「……はよ、姉さん」
『おはよう、朝ごはん出来てるよ』
「……ん、さんきゅ」
ちなみに今は先日母と義父が新婚旅行というものに出かけていったので作兵衛くんと二人で過ごしている。ちなみにこの新婚旅行は私と作兵衛くんが二人に話して行ってもらったもので、私と母は母子家庭、作兵衛くんと義父は父子家庭ということで今まで子育て大変だったでしょ、お世話になったからせっかくの新婚なんだし二人で楽しんでおいでよ、というもっともな理由からである。べ、別に深い意味はないよ!ないからね!ないんだからね!
「……ごちそうさま。前から思ってたけどやっぱり姉さんの作る料理うまいよな」
『お粗末様です。あ、本当?そうやって言ってもらえるとつくりがいがあるなあ、へへへ』
「うん、本当。弁当も毎日つくってくれるしさ。ありがてえんだよ。だからいつもさんきゅな………なまえ姉さん」
何気なく会話をしていて、自分の料理の腕をほめられたことに内心喜んでいると不意に名前を呼ばれて、動揺、する。
『………っ名前』
「ああ……やっぱり“姉さん”だけだとなんか落ち着かなくて、試しに名前つけてみたら案外落ち着いたからそう呼ぶことにしたんだよ。そのかわり俺のことも呼び捨てでいいし。……嫌、か?」
『………ううんっ、そんなことないよ、名前呼んでくれてありがとう、作兵衛』
名前を呼ばれて動揺したことは確かだが正直に言うと名前を呼ばれた嬉しさで思わず口元がゆるんで何も考えずに返事をしてしまった。
「…………っ…!俺!」
『ん?どうしたの?』
「…〜〜っ、なんでもねえ!!着替える!!」
なんだか作兵衛が何か言いたそうだったから待ってたんだけどなあと思いながら私も朝食の後片付けをして学校に行く準備に取りかかった。
Hello, my brother!