それから監督は三橋に全力投球を体験してもらおうとか言って三橋に重りを持たせ、マウンドに向かわせた。
「球威上げるのがいけないこと?」
監督がスピードをはかるやつをいじりながら阿部に問いかけた。それに阿部も答える。
「は?」
「コントロールと変化球だけで何回戦まで行けるの?」
「行けます。どこまででも」
「“オレがリードしてやれば”?」
監督のその言葉に阿部は振り返った。そして監督は阿部のおでこを指ではじき、
「阿部君は捕手をわかってないね」
そう言い放った。阿部は顔を青くして驚いている。そこで三橋の準備が整ったらしく、阿部が座り、監督がはかる。そして俺はその光景を見てる。
三橋は重りを持ち、振りかぶった。が、思ってた以上に重りが重かったらしくなんだかぎこちない。ぎこちないながらもボールを投げたらボールはバックネットにあたり、三橋は前に倒れた。にしても今三橋が投げたボールさっきより速かったな。
「う、うう…………うあああ」
「111キロ。10キロアップね」
「111!!」
三橋は今の球速に驚き起きあがった。
「毛細血管の切れるカンジわかった?」
「きっ、切れてるっ、切れてるっっ」
「将来的には130キロ台を投げられるよ!」
監督の問いかけに三橋は答え、そして監督は笑顔でそう言った。けど阿部は
「こんなノーコン使えねェよ!」
「……あ、阿部君……」
キレた。俺には何で球威あげちゃいけないのかがわかんねぇ。まぁ確かに全力投球したらフェンスに当たったけどさ、野球部やるなら普通に球は速い方がよくないか?
「……オ、オレがんばる、から、球威も……コントロールもある投手に……」
「9分割のストライクゾーンだぞ!130キロでできるわけないだろ!こいつはこのままでいいんです。スピードは才能だけどコントロールは努力です」
「…………」
「こいつがどんだけ努力してきたか、あのコントロールがどれだけ貴重か考えてくださいよ!」
「───……体幹は鍛えてもいいでしょ?」
「それは……」
「私は先に戻ります。三橋君はこれの上でワインドアップできるようになること!」
「は、はい」
「ボールは投げないでね、今日の分の投球はお終い!」
「え、もう……」
「あなたがどんなムチャな練習してきたかは私にもわかるわ。でもね今まで肩やヒジが無事だったのは、全力投球してなかったからよ」
そう言いきった監督に三橋は狼狽えたが監督はこう続けた。
「合宿末には三星学園と試合組めたし!連絡したらね!レギュラーはムリだけど一年生とやらせてくれるって!あなたを嫌ってたチームメイト達とね〜〜〜〜〜!!」
まじかよ。監督やるねーっ!三橋なんか恐怖で変な声あげてるし。
「5時までがんばること!んじゃ棗ちゃん行くわよーっ」
そこで俺の登場か。
『はあーい』
特に言うことはないけどなんか二人が不憫だったので一言残して行こうと思う。
『ま、とりあえずガンバレ』
超他人事みたいな言い方になったけどまぁ、いいか!
全力投球!
(監督ちょっと待ってー)
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三橋くん全力投球の回。そして主が出てこないと言う(笑)