「困ったのう。やはり幸村になるのは難しい」
「もうあきらめたほうがいいんじゃないですか?仁王くん」
「そうだよ、俺になったら苦労かかるよ」
思わず肩がはね上がる。
詐欺師とも呼ばれる俺としたことが、情けない。
隣を見れば柳生が驚いた顔のまま固まっていた。
紳士のする顔じゃないナリ。
「ゆ、幸村くん。いつからいらっしゃったんですか?」
「えー?仁王が今手に持ってるカツラをカバンから取り出したくらいからかな」
「…ずいぶん前から見とったのう、幸村」
幸村の目が心なしか…いや、間違えなく笑っていない。
神の子は恐ろしいのう。
校内ではうかつに話もできん。
柳生と幸村が話をしている間に、こっそりカツラをカバンに戻す。
「…あれ?仁王、俺らしきカツラはどうした?」
「プリッ。なんのことだかさっぱりわからんぜよ」
幸村が笑顔のまま、無言で威圧してくる。
…神の子になれる日はくるんかのう…。
内緒話(ふふっ、俺になれると思ってるの?)2012/03/05
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