「幸村ぶちょー!」


赤也の声がして、歩む足を止めて振り向いた。
うれしそうに笑って走ってくる。
ほんと、犬みたいな奴だな…と心の中でだけ思う。


「どうした?赤也」
「へへっ、見てくださいよ!」


自慢げに差し出されたのは、英語のテスト。
『切原赤也 53点』
うん、俺だったら顔が真っ青になって採点ミスを疑う点数だ。


「どうっすか!俺、ちょー頑張ったんす!」


満面の、笑み。
赤也の笑顔には、毒気を抜かれてしまう。


「…そうだな。よく頑張ったじゃないか、赤也」
「!!!っありがとうございます!」


抱きついてきた赤也の髪に、知らずにのせられた自分の手をみて、苦笑した。






ほだされて



(でもこれは真田に見せないほうがいいよ)




2012/03/05


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