「幸村」
「なに?真田」
幾度となく繰り返してきたこの言葉。
出会った時から、今日この日まで。
なんどもなんども。
俺たちは、互いを呼び合う。
「ねえ、真田」
「何だ、幸村」
昔は、テニスの話ばかりしていた。
もちろん、今もそれは変わらないけれど。
でも今は、話すことがたくさんある。
家族のこと。
学校のこと。
勉強のこと。
部活のこと。
仲間たちのこと。
たくさん、たくさん。
だけど。
「さーなーだ」
「何だと聞いているぞ、幸村」
「ふふ、真田って呼びたかっただけ」
ただ、名前を呼びたいし、呼ばれたい。
そんな時もあるんだ。