デパートに買い物に行った時、美容部員さんの勧誘を断りきれず、お化粧をしてもらうことになった。

最近色々とサボっていて、眉毛の手入れもしてないし、顔の産毛も剃ってないしで恥ずかしい思いをしたけれど……それより何より一番気まずかったのは、やはり、私のボキャブラリーの貧困さだった。

化粧水を塗って、乳液を塗って、下地を塗って、化粧崩れ防止のクリームを塗って……という一つの行程が終わるたびに、「お肌触ってみてくださいーどうですかー?」と感想を求められるのだが、化粧水やら下地やらを塗っただけでこの私が気の利いた一言が言えるわけがない。

美容部員さんが言う「塗ってみたらマットな質感になりますよねー?」とかいう一言が模範解答なのだろうが、普段から職業柄派手な化粧が出来ないことを言い訳にしてほぼすっぴん同然の私が、そんなボキャブラリーを持ち合わせているはずがない。
何をされても、「……良いと思います」しか言えなかった。

自分のコミュ力の低さを改めて実感して、悲しくなった。

ちょっとだけ面白かったのは、全ての行程を終えた後に、美容部員さんに「大人っぽくなりましたね!」と言われたこと。
……大人っぽいというか、元々充分に大人だし、美容部員さんよりも私のほうが随分年上だったと思うのだけれど。
いくつだと思われていたのだろう。

ちなみに、夏用の崩れない化粧をしてもらったはずなのだが、地下に降りて晩御飯のお惣菜を物色しているうちに化粧は崩れた。
デパートを出るまでさえも、保たなかった。
自分の肌に、ほとほと愛想が尽きる。



「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -