久しぶりに宮部みゆきさんの『火車』を読んだ。

ネタバレであらすじをざっくり説明すると、『火車』は「借金取りに追われている女性が、天涯孤独の女性を殺して身分を乗っ取る話」だ。

前に読んだときは父親がクレジットカードで途方もない借金を拵え、修羅場を経て離婚した後だったので、クレジットカードの怖さを身にしみて感じたけれど、今回はまた別。

天涯孤独になることへの恐怖が胸に迫る。

私も母親が居なくなったらほぼ天涯孤独に近い境遇になるのだけれど、身寄りが無いというのは、何か事件に巻き込まれても発覚しにくいということだ。

幸いなことに私には財産が無いし、むしろ奨学金という名の借金があるくらいなので、金銭目当ての揉め事に巻き込まれる要素は皆無に近いのだけれど。

でももし万が一、何かしらの事件に巻き込まれて行方がわからなくなったとき、天涯孤独だったら、誰が真剣に探してくれるだろうか。

残念なことに、私は友達が少ない。

日常で一番接するのは職場の人だけれど、職場の人は私が出勤しなくなっても「こんなに無責任な人間だとは思わなかった」と憤るくらいで、どこまで踏み込んでくるだろうか。

現在私が寝起きしているのは生まれた時から長い間住んでいる実家なので、ご近所さんとは顔見知りだけれども、
去年も「往復3時間の通勤が面倒臭い」と職場の近くにアパートを借りて、実家に帰ったり帰らなかったりの生活をしていたような人間なので、しばらく顔を見ないくらいでは異常だと感じないだろう。

そうなると、結婚して自分の家族を持つのが一番なんだろうなぁ、とは思う。

私は結婚に興味がないのだけれど、さすがにこの歳になると周りの友達は焦っている子が多くて、お見合いパーティーや合コンに行ったという話をよく聞く。

以前に「私も母親が死んだら、お見合いパーティーに行こうかなぁ」と冗談半分で話していた時に、友達に「お見合いパーティーに行っても、年収が200万台のくせに『マイホームを持つのが夢』とかいう男ばっかりでイライラするだけだよ」と言われたことを思い出した。

その子は私よりも高給取りなので、理想が高いんだなぁ……とその時は思っただけだけど、よくよく考えてみれば、私だって年収200万台しかないのに家を建てようとしているような男は絶対に嫌だ。

生き方は人それぞれなので、そのような考え方を批判するつもりはないけれど、私にはそのような夢見がちな男の人を支えていく甲斐性もない。

つまり、あわよくば誰かに支えられたいとは思っていても、支え合いたいという気持ちが皆無なのだ。

そのような考え方の人間に、結婚は無理だ。

結局私のような人間は、倹しい生活をして決して借金等のトラブルを作らず、無断欠勤をしたら何か不測の事態に巻き込まれたのだと疑ってもらえるように誠実に勤め、自ら失踪する原因などないと思ってもらえるように日々健全に振る舞うしかないのだ。

真面目に、生きよう。



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