目立つ、その一言につきる。何で隣に座ってしまったのか早々後悔してしまった。移動しようかと悩んでいるとねえ、と隣の、目立っている男から声をかけられる。
「ガム食べる?」
『はあ、』
イキナリなんだこいつは、そう思って凝視しているとガサゴソとポケットを探りだした。何してんだよ…
「あ、切れてた。今食べてるのが最後だったみたい。ゴメンゴメン」
声を荒げて手を出さなかったことを褒めてもらいたい。ゴメンじゃねーよふざけんな。ちょっとガムもらえるかもしれないって期待しちゃった俺が恥ずかしいだろ、クソッ
「アンタも適合者なの?」
『、そうだけど』
「俺と同じか、少し年上っぽいけど…まあ、一瞬とは言えオレの方が先輩ってことで!」
ハ??え?ハァ??同期すらしてもらえないと?何この職場、やってらんねえ、何て思ってても言わない。今後の人間関係のためでもある。今ギリギリのラインで苦笑いできていると信じてまた顔を前に向ける。こいつと一緒に仕事…できるかな、俺
「よろしく!」
『…ああ』
気のない返事をしつつ、目の前から来ている真っ白い服を身に纏ってヒール音を響かせながら真っ直ぐこちらへ歩いてくる女の人を見ていた、ら俺たちの前で立ち止まった。何か、イヤな予感が…
「立て」
高圧的なその声に慄き俺は一瞬で立つ。身の危険においては職業柄敏感である。もう職業かわったけれど。
「え?」
「お前だ、立てと言っている、立たんか」
女の人に睨まれながらそう言われ、隣の目立っていたヤツは急いで立った。見事な起立だ…
「これから予定がつまっているので簡潔にすますぞ。私の名前は雨宮ツバキ。お前たちの教練担当者だ」
ハイッイヤな予感的中した!一分前くらいの俺に拍手だよ…あたってほしくなかったわ、ちくしょう。
「このあとの予定はメディカルチェックを済ませたのち、基礎体力の強化、基本戦術の習得、各種兵装の扱いなどのカリキュラムをこなしてもらう」
そんなにするのかよ、げっそりした顔にさらに鞭を打つかの如く女の人、教官は追い上げをかけてくる。
「今までは守られる側であったかもしれんが、これからは守る側だ。つまらないことで死にたくなければ私の命令には全て"YES"で答えろ。いいな」
絶句。まさにその言葉がぴったりである。こんなドM向けの言葉聞くとは思わなかった…
「わかったら返事をしろ」
「『はい!』」
二人して肩が飛び跳ねたわ…きっとこの先アラガミとじゃなくてこの人とのやりとりの方が命が幾つあっても足らなさそうだと思うのはきっと俺だけではないはず。
「さっそくだがメディカルチェックを始めるぞ。まずは月成だ。ペイラー・サカキ博士の部屋に一五◯◯までに集まるように。それまでこの施設を見回っておけ。今日からお前らが世話になるフェンリル極東支部通称"アナグラ"だ。メンバーに挨拶の一つもしておくように」
以上と言い教官は歩き出していく、隣のヤツはへなへなと萎れてった、うん、漸く緊張感から解放されたといったところか。俺も少し肩を鳴らす。さて、何処から挨拶しにいこうか。