「やあ、長らく待たせてすまない」


本当にそう思っているのか、スピーカー越しから流れる声の主を見据える。生憎肉眼で確かめられるほどの距離ではなかった。さすが、極東支部といったところか、とにかく広かった。軽くあたりを見回しながら立ち止まる。


「さて、ようこそ…人類最後の砦、フェンリルへ」



できればこんなところ、きたくもなかったけれど。

「今から 対アラガミ討伐部隊 "ゴッドイーター" としての適性試験を始める。」


試験、それに受かってしまえばゴッドイーターになってしまう。それはイヤだな、でもここに来た時点で受からない人はほぼいない、と言われるくらいなのだ。いい加減腹を決めなければ。



「少しリラックスしたまえ、その方がいい結果がでやすい」


そんな俺の葛藤を知ってかしらぬか、きっと後者だと信じたいが助言をしてくる。きっと何人もの人がここに来て緊張するのだろう。俺とは違う意味で。

「心の準備ができたら、中央のケースの前にたってくれ」


決意はここに来る前にした。あとは、覚悟だけ。あんな目には、もう二度と後悔はしたくないのだ。そっと息を吐き、気味が悪いくらい静粛な空間の、中央のケースに向かって歩きだす。カン、カン、カン、歩く都度靴音が響く。


何人ものゴッドイーターを生み出してきたのだろうか、ケースには妙な貫禄があった。もう躊躇はしない、スッと手をケースにおく。どくり、どくり、心臓が、煩い。そう思った瞬間だった。勢いよく下におりてきて手首から"何か"が体内へと入ってきてのたうちまわっている感覚がわかった。苦しい、痛い、いたいいたいいたいくるしい!引っこ抜いてしまいたかった、左手を右に添えて引っ張ってみるがケースは頑丈すぎるくらいで、引っこ抜くことをあきらめて気を紛らわすため軽く右手首を抓るが全身がいかせん痛い。どくどくじくじくする。何だこれ、何だこれ…っ!暫く悶絶していると変な音をたてながらケースが開く、右手首にはギラリと金属特有の鈍い光を帯びた赤い腕輪ががしりとはまっているに加えて武器を握らされていた。重いような、軽いような、でも何故かしっくりくる、武器。軽く持ち上げてよく見ていると黄金色に光った部分から触手のようなものがのびてきて自分の腕輪の穴にささっ?!えっ?!は?!


「おめでとう、君がこの支部初の"新型"ゴッドイーターだ。適性試験はこれで終了だ。次は適合後のメディカルチェックが予定されている。始まるまでその扉の向こうの部屋で待機してくれたまえ。気分が悪いなどの症状がある場合はすぐに申し出てるように。」


ああ、これで、ついになってしまったのだ。あの、ゴッドイーターに



「君の活躍に期待しているよ、月成静夜くん」


地獄の、始まりだ。







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テーマ「人外ファンタジー」
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