神崎



『ほんっと、ごめん…』

「主のせいではございませんよ」


一期一振さん、その親切心からのフォローが何よりもつらいです。

つい先日我が本丸に新たに太刀がやってきた。な、なんと!その名も一期一振!あの藤四郎たちのお兄さん?にあたる?らしい。そこらへんイマイチわからないんだけど、よく太刀がくるたびにいち兄とか粟田口の短刀が言っていたからお兄さんなんだと思うんだけど、その、やっぱりね、家族は一緒に居るべきだと思うし、政府からも刀を集めろ、と言われていたから集めてたわけ。今確認されてる短刀の粟田口だけでも七人って聞いたときにはもう驚いた、いやだって五人で全員だと思ってたし、確認されてる短刀の藤四郎はみつけることができたわ〜って初期の段階で乱とジュース飲みながら安心してたんだわ。そしたらさ、そのまだ会っていない二人っていうのは皇室御物として献上された平野藤四郎と歴代の主は名将で有名な厚藤四郎だよ、って言われたときには顔面蒼白になったしほんと自分なにしてるんだろうって、勉強しようって思いました。そこから我が本丸は総力を挙げ平野藤四郎と厚藤四郎を捜索をすること二週間。

諦めた。

おい!と突っ込みたいだろう?落ち着いてくれ、違うんだ、聞いてくれ。実は捜索中にちまちま鍛刀をしていたんだ。短刀は低コストでまわすことができるから、一日二回、鍛刀していたんだ。何日か続けてた頃かな、いつもは藤四郎の誰かに頼んで鍛刀していたんだが、山伏さんが近くにいたからそういえばこいつと鍛刀したことがないことに気がついて、まあ物は試しに、一回な。鍛刀したらなんとびっくり!平野藤四郎くんが!鍛刀!で!きてくれたのだ!!
余談だが俺はいつも山伏と呼んでいたがこの日から山伏さんと呼ぶようになった。

藤四郎たちはそりゃあ喜んだ。兄弟とやっと会えたんだ。でもその再開の喜びも束の間よ、いないヤツの話題になってだな、そのとき、審神者は決意した。かの一期一振と厚藤四郎を必ずしも我が本丸に迎え入れると決意した。

そしてふ、と思い立つ。平野藤四郎を鍛刀したんだ。もしかして、平野藤四郎鍛刀することができた今なら厚藤四郎も鍛刀することができるんじゃね…?と。正直に言おう。このとき俺は調子に乗っていたのだ。
刀剣男士たちに日々君は鍛刀の才能がないねとか僕たちが仲間を見つけてくるから君は大人しくしてるんだよ、とか!鍛刀するの?それより僕と乱れよう!と言われ続けた俺が!鍛刀で!お目当ての!平野藤四郎を!鍛刀できた今なら!もしかして厚藤四郎も!太郎太刀も!次郎太刀も!一期一振も!鶯丸も!もももしかしたらすっげーーーーレアだって騒がれてる三日月宗近、小狐丸とか?!きちゃうんじゃね?!って思ってた時期が俺にもありました。


まあ結論から言っちゃえば太郎太刀さんをお迎えいたしました!!やったね!


二回目で鍛刀を諦めた俺は偉い方なんだと思う。世の中諦めが肝心なのだ。

俺だって先輩審神者みたいに今日とて厚藤四郎くんがこないと嘆く日々とお別れしたい。そこで、だ。作戦をチェンジすることにしたのだ。そう、その名も先にお兄さんを探しに行こう!作戦。何故この作戦にしたかと言うと由縁があるものを近侍にして鍛刀すると出易いようなっていう偉大な先輩たちのアドバイスを聞いてそれしかねえと思ったからだ。幸いにも第一部隊の奴らは頼もしい奴らばかりだ。なんせ本丸で俺の鍛刀よか信頼できると言われている通称拾う神たちの集いだ。こいつらなら、と日々送り出すこと六日目、山伏さんを部隊長に出陣させたら本当に見つけてきやがった。何?山伏さんは藤四郎たちにとって神様なの??もうやっぱり俺、山伏さんのこと山伏さまって呼ばなきゃダメ??俺は必死に厚藤四郎がくるように鍛刀してたのに一向にくる気配すらなかったのに山伏さまがあっさり連れてきちゃうの?なんなの?ありがとう!!あなたは本丸のきゅうせいしゅです!!やっぱ厚藤四郎も山伏さまに頼むしかないの??いやま、まあ一期一振がきてくれたからとりあえず一期一振と鍛刀しよう。と、まあこんな感じで冒頭に戻るわけだが…


『いや、俺の力不足だ…。鍛刀が破滅的で、お前の弟に会わせてやることができなくて本当にすみません、ごめんなさい、許してください、お力をお貸しください』


とまあそれできて早々お願いしてきてもらって鍛刀してきたらね、聞いてよ、ダメでした!!!

自分の鍛刀能力に絶望したよ…。一期一振にも気を使わせちゃったし、初日からこんな審神者で申し訳ない…

「お力になれず申し訳ございません!」
『弟さんに会わせてあげることができず本当に申し訳ございません!!』
「そんな、弟たちにはもう会わせてもらっております、そうあまりお気に」

『そんなんダメだ、家族は誰一人欠けちゃいけないんだ。そんなことを俺に言っちゃダメなんだ。お前は俺を怒る権利あるんだぞ。勝手にあいつら起こして、あいつらを戦場に向かわせて、あいつらを寂しがらせちゃって』

「人の姿でいるのは何分、」

『ああ、そっか、はじめてか…でも俺らの常識はインプットされてるんじゃなかったっけ?まあそこら辺は追い追い話すか。でも、うん、まあとりあえず一期一振がとりあえず来てくれたから助かったよ、…来てくれてほんと、ありがとうな、一期一振』

「いえ、私こそ、弟たちのこと、ありがとうございます。これからは、私を含めどうぞよろしくお願いいたします。」


おう、とちょっと照れながらも返事する。いいヤツ入ってきてくれてよかった、と安堵し明日からの厚藤四郎捜索のための出陣をどうするか考えていたが一期一振に迎えに行ってもらおう。きっとそうすれば厚藤四郎もでてきてくれるだろう。藤四郎って皆お兄ちゃん好きっぽいし。


『じゃ、明日から近侍よろしく、わかんないことあったら…そうだな、燭台切光忠にでも聞いてくれ。それじゃあ時間取らせて悪かった。薬研、前田、乱、平野、秋田、五虎退、鯰尾、骨喰、お前らいるんだろ案内してやれ。』


はーいと何処からともなくわんさか藤四郎が一期一振を取り囲む。うむ、これはなんとも…スーパースターが出待ちされて見つかった時に群がってくるファンかな…?いや、感動的な兄弟の再会になんという例えをしてしまったのか、とりあえず記念に一枚カメラで写真を撮って、そろりと抜け出す。撮った写真を見返すとやっぱり一人、いない。うん、厚藤四郎、必ず見つけ出してみせるからな。再度決意し直し執務室へと歩き出した。


「近侍といっても特に仕事はないんだけどね」
「そう、なのですか?」
「うん、何かあってからじゃ遅いからなるべく一緒に行動する、くらいかなあ。へし切くんとか前田くんは忙しいときだけ書類手伝ってって頼み込まれてるみたいだけど、そもそもそこまで追い込まれるなんて滅多にないし、お茶とかは内番もない子が担当してくれるからね」
炊事洗濯とかは薬研くんから聞いたみたいだし、これといって説明することは今はないかな、またわからないことがあったら遠慮なく聞きにきてね。



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