金田


『?ふぉふぇえいほ?』
「主」
『ふぁい』
もぐもぐごっくん。食べ物を口に含んだ状態で返事をしたらへし切長谷部さんに怒られてしまった。まあ行儀悪かったもんね。すまない。でもなあ
『近侍を固定してほしい、かあ。え〜っと、理由を聞いても?』
「落ち着かねえ」
『あっ左様でございますか』

落ち着かない、まあ確かに落ち着かないかもしれない。けどなあ。ま、でも全員揃ってるし、皆食事終わってるし、いい機会かもしれない。

『確かに、落ち着かないかもしれませんが、皆さんにはどのような事態にも対応できるようになってもらいたいんです。例えば、のお話です。この本丸が敵に攻め入られたとき、皆さんには選択肢がたくさんあります。敵に立ち向かうもよし、助けを呼びに行くのもよし、ですが、私が囚われたときが問題です。私が敵に囚われたとき、それ即ちそれはあなたたち刀剣男士全員捕まった、ことにもなるのです。そのとき、皆さんのすべき行動は一つになります。確実に私の心の臓を止めてもらうということです。助けようとしないで、確実に、です。言いたいことはたくさんあると思いますが、まあ落ち着いて私の話を最後まで聞いてください。やすやすと本丸に敵が攻め入るなんてこと起こりませんから、それからもし敵が攻め入ったとして、私がとらわれる、なんてことにないように皆さん一人一人に色んな体験をしてもらいたいのです。こんな体験、なんて思うかもしれません。でもほら案外役に立つことだってあるんです。だから、近侍を固定せずに全員一定に回るようにしているのです。それに皆均等に近侍にすれば全員同じ位強くなってもらうことができるでしょう?まあ誰がこんなやつ守ってとか思うかもしれませんが、そこらへんはまあ、うん、よろしくお願いします。私、敵に捕まって死ぬくらいなら私はあなたちの手でこの人生に終止符を打ちたいのです、わがままだとはわかってはいますが、やっぱり見ず知らずの者に殺されるよりも、大切なあなたたちに引導を渡されたいのです。最低なことを言っている自覚はあります。でもまあ可能性の話であって、でも絶対あり得ない話ではない故、この話は心のどこかに置いといてもらえれば嬉しいです。え?近侍を固定しない理由になってない?え〜だからですねえ、均等に強くなってもらいたいのです。あとまあ単に私があなたたちと仲良くなりたいってのもあります。以上です!納得できない人は各自何故自分が近侍になったのか、考えて各自行動してみてください。私はあなたたち全員を納得させるような理由をもってませんから、自身で納得のできる答えを見つけ出し、近侍になった際は私の近侍として勤め上げてください。』


* * *


と、まあああは言ったが一部嘘であとは全て本当だ。ぶっちゃけ全員が全員私を殺してくれるとは思っていない。だからこれは私と長谷部だけの秘密である。


「は、」
『えーっと、ですから、君たち私の力?で人型になれてるらしいんです、詳しいこと私にはわからないんですけどね。それで、この力を利用されたらお偉いさんたちもまあ困るんです。だからもし、この本丸が攻められたとき、長谷部さんが一番にやることは私の息の根をとめることです。』
「そ、れは」
『ーこれは、主命です。何を差し置いてもこれだけは護ってください。酷いことを頼んでいるとはわかっております。でもこれはあなたにしか頼めないのです。あとこれは他言無用ですよ、これも主命です、ああ二つになってしまいましたね、…これらの条件を飲んでくださいますか?』


「ーー、主、あなたは酷いお人だ」


断れないと知っていて頼むのだ。酷いと言われても仕方がない。だって、本当のことなのだ。酷いことを頼んだのだから。それでも、きっとこの刀はへし切り長谷部はやってくれると私は信じている。


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