金田




『前田くんと薬研さんはちょっと後で執務室にきてください、以上です。』


ほっと一息いれ、あたりをキョロキョロ見回す。よし、もう皆解散したようだ。はあ、とため息をついてから早足で執務室へと向かう。この間前田くんと薬研さんの前で号泣するという事態をやらかした。しにたくなった。大事なことだから二回言う、しにたくなった。翌日も二日酔いのためか頭痛が酷かったけれど丸一日休んでしまったため仕事がたまってしまったのだ。普段の私ならそのくらい平気だったが頭痛とやる気のなさのせいか半分も終わらず、今日はその終わらなかった分と今日の仕事を消費すべく出陣も遠征もなし。内番だけにした。先ほど任務内容を告げたら獅子王さんとか同田貫さんとか大倶利伽羅さんとかそう言ったワーカーホリック集団にブーイングされたがシカトだシカト。休むのも仕事のうちだとピシャリと言っておいた。別にためていた仕事のことを考えてイラッとしたから八つ当たりしたわけじゃない。嘘です。八つ当たりしましたごめんなさい。

バサッと書類を投げてから机の上に足をのせROCKだせ!と叫びたい気分だ。いっそのこと書類を庭に投げ捨ててその紙くずで焼き芋をするのはどうだろう?確か焼き芋が食べたくて安納芋を箱で買ったはずだ。じっくり焼いて皆で食べればきっとその甘さに虜になるに違いない。そうだそうすれば書類燃やしても仕方がなくね?!


『よし、そうと決まれば!』

「主君、申し上げにくいのですがそれはあまりお勧めできないかと…」
『ひいいい!ま、前田くん…い、いつからそこに…?!』


というか今の完全に聞いてた?!と聞けば申し訳なさそうに申し訳ございませんと腰95度、見本としてばっちりの腰の曲げ方である。

『ご、ごめんね、前田くんごめんねええええ違うんだよおおおおお私が悪いんだよおおおおおお』
「しゅ、主君?!どうか落ち着いてください、どうかお顔をあげてください!!」
「大将、来た、ぜ…何してるんだ?」

『ご覧の通り土下座です!!今の戯言と付け加えまして、先日情けない姿をお見せしてしまい申し訳ございませんでした!!できれば他言無用にしていただきたく!土下座させていただいている限りでございます!!』
「わかりました、主君の名であれば内密にさせていただきます、ですからお顔をどうか」

ま、前田くん!やさしい思わず鼻がズビッてくるくらいには優しい。これにて一足安心かなって思って顔をあげようとしたそのときすまねえ大将と薬研さんが申し訳なさそうに切り出す。な、なんか嫌な予感がするぞ〜!オラワクワクすっぞ〜!!

『は、はひ…』
「もう話ちまった」
『oh...』

【悲報】私の人生オワタと某つぶやきでよく使うのが流れてきたのだった。 昨日とか朝の段階で気がつかない私も私だけどな!いい大人が号泣したんだぜみたいなの報告しちゃったの何それ恥ずかしい!そういや昨日はやけに短刀たちが主さま、って妙にたくさん話しかけてきてくれたなって思ってたよ!ちくしょうそういうことか!よくよく思い出してみればすれ違う刀剣たちに何か言いたそうな顔されてたわ!思っ切り頭をうってしにてえ!!

「大将、大将!」

『あ、ああごめん…ちょっとチャイナタウンまで何時間かかるか計算してた。呼び出してごめんね、今日のおやつ、冷蔵庫の中にある羊羹切り分けてみなさんたちで食べてくださいね。私はこれから終わってない仕事片付けます。明日からはまた出陣と遠征することになると思いますので今日はどうかゆっくりなさってくださいませ、それでは』


薬研さんは納得していない顔をしていたが前田くんにつられ執務室をでていってもらった。申し訳ねえ、薬研さんのしたことを咎めることなんてお門違いにも程があるからできやしないよ、ああ世の中には知らない方がいい事実がたくさんいっぱいや…。一先ず考え事を中断し、目の前に積み重なる書類に取り掛かることにした。仕事に集中しよう。





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