34.柳生篇1
女中の仕事がひと段落したため、私は沖田さんと一緒にテレビを見ながら煎餅を食べていた。縁側には、刀を見つめてため息をついている土方さん。


「あれ、どうしたんですか?」

「喧嘩に負けたんでさァ」

「へぇー」



刀にヒビが入るって相当の強者だったんだな。私はお茶を啜りながら、淡々と語る沖田さんの話を聞く。


最後らへんは、土方さんを煽るような言い方してるし、イライラしてるの伝わってくるもん、土方さん。


「剣も色恋も...幼馴染みの許嫁ときちゃあ近藤さんの出る幕はねーや」


幼馴染みの許嫁とか漫画の世界じゃん。あ、漫画の世界だった。



「総悟、近藤さんナメんなよ。今回の見合い近藤さん見事にあの王女口説き落としたんだぞ」

「するってーとなんですか。このままいったらあのゴリラが俺たちの姐さん」

「近藤さんお見合いしてたんですか?相手どんな人ですか!?」



最近女中の仕事が忙しくて近藤さんと絡んでなかったから知らなかった。



「人じゃねェ。ゴリラでィ」



ほら、と言ってケータイのアルバムを見せてくれた沖田さん。ゴリラって女の人に失礼でしょーって思って覗いたら、


「...ゴリラじゃん」

「ゴリラって言ったじゃねぇーか」

「比喩かと思ってました」



いや、ゴリラと人って...同じ類人猿だけどさ...というか近藤さん、ゴリラに似てるってだけでゴリラではないからね?



「おい、なる」

「はい?」



沖田さんは私の耳元であることを呟いた。



「マジでか」


うわ、その親指へし折りてぇ。ドヤ顔して親指たてるな...。





________
_____


雨か...



私は和傘をさして、ある家の門の前にいる。



「わりーな2人じゃねぇ。新八、今日から俺らも門下だ。なんだっけ?天然パーマ流?」



そう、土方さんが負けたという柳生一門。
この間沖田さんに言われたのはここで面白いものが見れるということ、あとはまぁ無理矢理つれてこられたようなもんだけど。



銀ちゃんの言葉を皮切りに、柳生一門とのケンカが始まる。



「大義もクソもない戦いに余計な奴巻き込むワケにはいかんだろ!なのになんでお前らまで来るかなァァもォォォ!!それもなるちゃん連れてきたの誰!?」

「近藤さん心配いらねーよ。俺も我ァ通しに来ただけだ。柳生には借りがある。そいつを返しにきただけさ。ちなみに今日は仕事休みだしそこんとこも心配いらねぇ」

「近藤さん俺も我ァ通しに来ただけでさァ。このままいけばゴリラを姐さんと呼ばなきゃいけなくなる。ちなみに今日はバリバリ仕事でしたがサボってきやした」



え、沖田さん仕事なの...そういえば神山さん探してたもんな...。


「近藤さん、私は沖田さんに面白いものが見られるって言われて拉致られました。ちなみに仕事は有給貰いました」

「やっぱり総悟が連れてきたのか...」



あ、予想通りですよね。私が一緒についてきた時、土方さんは残れって言ってたもんね。


足の傷は綺麗に治りつつあるから大丈夫。



「大丈夫でさァ、俺が守りやすぜ」

「...え」

「総悟...お前」


んん!?今のは、キュンってした!不意打ちはズルくないですか?いつもクソドSなのに...



新八くんみんなそれぞれ言葉を伝えていく。新八くんってシスコンなんだ。今知ったわ。みんな承知の上らしい。



「新八くん...この前助けて貰ったお礼」



私も沖田さんのあとを追いながら伝える。到着したのは道場。神楽が扉を開けた瞬間、神楽にご飯が飛んでくる。卵かけご飯を食べていたのか、神楽の丁度股の部分に生卵がかかる。


「オイ、チャイナ、股から卵たれてるぜィ。排卵日か?」

「うわ...」


神楽は沖田さんの顔をつかみ投げ飛ばす。


「今のは総悟が悪い...」

「サイテーでーす」



普通にセクハラだし、引いた。さっきのトキメキ返せ。沖田さんは柳生の人たちの所へ飛ばされ、その背後から剣を突き付けられている。



「アンタらのようなザコ、若に会わせられるわけねーだろ。俺たちが剣を合わせるまでもねぇ。オラッ得物捨てな、人質が...」


人質という言葉で、私含め6人が沖田さんに向けて各々の得物を投げる。私は屯所から借りパクしてきた、木刀を。


沖田さんは残念ながら華麗に避けていた。


「おいコラお前も投げてただろィ」

「つい、ノリで...」


クソ、バレてた!


「あとでなるも覚えときなせェ...」

「痛い痛い...!」


頭を掴まれ、横に揺らされた。気持ち悪くなる。








道場破りは真剣に
(ってか沖田さんあれセクハラ)(セクハラじゃねェ)

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