「たしか、今日だよな!」
「生のお通ちゃん!サイン貰おぜ!」
こんにちは、みなさん。本日の真選組隊士の方々は大変浮き足立っております。なにやらここ最近というか今までの積み重ねてきたイメージ悪化を取り戻すべく、本日一日限定で大人気アイドル、寺門通ことお通ちゃんが一日局長を勤めるらしい。
たしかにお通ちゃんは可愛い。隊士の中にも熱烈なファンがいることは知ってはいけるど、中々女の人と接する機会があまりない隊士のみなさんはファンでもなくても鼻の下を伸ばしているのは、屯所内に充満する浮ついた雰囲気でわかる。
花の女子高生だった私が四六時中いるのに、なんて奴らだと思ったけど、所詮極々一般の町人Bなので、隊士のみなさんは何とも思っていない事は丸わかりである。
「おはようございます」
「おーす、町人B」
「町人Bじゃねぇーってば。沖田さんもお通ちゃんに鼻の下伸ばしてるタイプですか?」
「アイドルには興味ねぇよ」
「へぇー」
隊士の中で鼻の下を伸ばしていないのは、鬼の副長こと土方十四郎と今目の前にいるドS王子、沖田総悟のみ。
「でもアイドルが一日局長だと、ココ最近世間を賑わしている婦女誘拐事件の犯人狙いそうじゃないですか?」
「そうだねィ、ま、なんとかなるだろィ」
「えらく適当ですね」
「適当じゃねぇ!考えてないだけでさァ!」
「...はぁ」
沖田さんほんとこれでも警察なんだろうか。ま、真選組のイメージ下げてんのはほぼ全部が目の前にいるドSなんだよね。
「今日は仕事か?」
「そうですよー。今日は買い出しと洗濯係です。あとは皆さんが帰ってくるのを待ってる缶係ですかね!」
「じゃあしっかり待っとけ」
「へい!あ、沖田さん帰ってきたらアレしましょ!スプラ○ゥーン!昨日買ったんです!」
「!やりまさァ!」
沖田さんが帰ってくるまで仕事終わり次第レベル上げしよ。
「じゃ、気をつけてー」
私は仕事に向かう沖田さんにそう言って洗濯物を干しに行こうとしたら、沖田さんに肩を掴まれた。
「え?」
「買い出し中気ィつけろよ。おめェは買い出し中に問題起こしすぎでさァ」
「...承知してます」
沖田さんはそれだけいい、戻っていた。
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今日のメニューはきっとカレーだな。
ポークカレー。豚肉は今朝、お肉屋さんが配達してくれたし、野菜は買い溜めしているものがある。私のマイバッグには、カレールーとマヨネーズが3本。3本は少ない方。ま、業務用だから大きいんだけど。30本買い出しに行った時に比べれば恥ずかしさも重さも皆無である。
気分ルンルンで屯所に帰ろうとスキップをしていたら、段差に躓き私は変に足を挫いてしまった。地味に痛い。捻挫だわ、これ。捻挫って地味に痛いよね?え?歩けるかな??
「大丈夫かい?お嬢ちゃん」
「あー大丈夫ですよー」
丁度近くにいた人が蹲っていた私に手を差し伸べくれた。私はお礼をいい、手を差し伸べてくれた人の手を掴んで立ち上がると、槍を持った顔を包帯で隠している攘夷浪士だろう人達に囲まれていた。
あー、これは、またか...
ごめんなさい、沖田さん。問題、起こしちゃいました。
私を囲んでいた攘夷浪士のおじさん達は、天狗党と呼ばれる集団で、今世間を騒がしている婦女誘拐事件の犯人らしい。今から異菩寺に立てこもるらしい。足を挫いた私に優しくしてくれたのに、なんでこんなことしてるんだろうと不思議に思った。
腕を後ろに回されて、胴体を縄でぐるぐる巻きにされ、異菩寺の上の階に行くと、なんと本日真選組一日局長をしているはずのお通ちゃんが捕まっていた。いや、あの人たち何してんの?
真選組な異菩寺に到着したらしく、お通ちゃんが大きな声でみんなァ!と叫ぶ。
私は後ろの方で客観的に傍観していたら
「お嬢ちゃん、真選組の女中だろ?お前も立て」
「マジでか」
こいつら、私が真選組女中と知って誘拐したんのか。
私は挫いた足を庇い、片足でバランスを取りながらお通ちゃんの隣に立った。何故か筆記でやり取りしている、真選組と天狗党の方々。
”字が小さくて読めません”
って沖田さんが書いている...は!?
”町人Bあとで殺す”
とか物騒なこと沖田さん書いてるんですけど!?テレビ局たくさん来てるのにそんな物騒なこと書いていいの?ってか私助かってもたすからなくない?え?もう訳わかんない!
私は喋ることもせず、やり取りを見ている。
あ、土方さんがなんかやり出した...
「っ!ふっ!!ま!土方さん、ヤバっ!」
「おいコラ!潮崎!!帰ったら覚えとけよ!」
真選組の鬼の副長が3回回ってワンって言った。それもカッコつけようとしてるから尚更面白い。
そこからは何故か天狗党の方々がカレーを食べたくなったらしく、真選組にカレーを作れって命令をしだして、それに真選組のみんなは従いカレーを作り出した。みんなカレーぐらい作れそうだから今度女中一斉に休みにしてくれないかな。
カレーを作っている間に土方さんと沖田さんが遊び始めてて、もうこの人たちイメージ改善とかどうでも良さそうだなって思った。でもそんな中、天狗党は”局長を斬れ”という命を真選組に言い渡す。
「やめてお願い、もう...キャッ!」
「あのーその人一応アイドルなんで乱暴なことやめて貰ってもいいですか!?」
お通ちゃん可愛いし、アイドルは顔が命なんだからそんな物騒な物顔に近づけないで欲しい。
「じゃあ、お嬢ちゃんならいいのか?」
「っ!たぁい!」
足踏んだ!?
ううん、違う、槍で私の足の甲突き刺したんだ。足首も挫いたし、足の甲槍で突き刺されるし、ほんと災難。足の甲も結構大きめな血管あるんじゃないっけ?槍は恐らく私の足を突き刺しはしたが、貫通してる訳ではない。けど、私の足はみるみる赤く染まっていく。
「...なるちゃん..はぁ、よっしゃ来い」
痛みに耐えながら私は柵から身を乗り出して下を見る。
「色々手伝ってもらってなんだが、結局オレたちはこーいう連中です!もがいてみたがなんにも変われなんだ!相も変わらずバカで粗野で嫌われ者のムサイ連中です!どうやらコイツは一朝一夕でとれるムサさではないらしい!だがねお通ちゃんの言う通りもがいて自分たちを見つめ直して気づいたこともある!」
ヤバい、ゴリラなのに近藤さんがカッコよくみえる
「俺達はどんだけ人に嫌われようがどんだけ人に笑われようがかまやしない!ただ護るべきものを護れんふがいない男だけは絶対になりたくないんだとね!剣を抜けお前ら!!さぁかかってきやがれ!」
人の良さだけじゃない。きっとこの人のこの真っ直ぐさにみんな惹かれ慕っているのだ。
土方さんと沖田さんを含め10人以上の隊士が近藤さんに剣を突き刺す。
「局長ォォォォ!!」
お通ちゃんの叫び声と共に天狗党の人が叫ぶ。後ろを振り向くと、パンツ1枚の銀ちゃん...え?パンツ?なんでパンツ?
「なるちゃん、ごめん、怪我してるけど1人で降りてきてね」
「え...」
私の近くから知っている声が聞こえその声の方を振り向くとカツラを脱ぎ捨てた女装した山崎さんと山崎さんにお姫様だっこされているお通ちゃん。山崎さんは本当に私だけを残してお通ちゃんと共に飛び降りた。え、観察凄いけどさぁあ!!!
「私結構な怪我人なんだけど、地味ザキ!!!!」
え?普通結構血を流している怪我人置いていく?仮にも女なんだけど?
地上を見ると、近藤さんはピンピンしていて、隊士数名と私たちがいるところに狙いを定めバズーカを構えている。
あ、これ殺される...
バズーカが撃たれた瞬間、パンツ1枚の銀ちゃんに抱きかかえられ、私は間一髪のところで異菩寺から脱出したのである。
一日局長と問題児
(銀ちゃんセクハラ)(落とすぞてめぇ)