32.添い寝は癖になる
「沖田さん」

「.....」

「おーい、沖田さん」

「...うるせぇ。ってか沖田って呼ぶんじゃねぇーのかよ」

「あ...」



そうだ、この前沖田って呼んでいいですか?って言ってたわ。



「いやー、やっぱ沖田さんのほうがしっくりくるなーって。会った時からずっとそう呼んでますし」



あ、おんぶって結構いいかも。少し揺られてる感じが赤ちゃんだったらゆりかごにいるような気分。



「なんでチャイナ、お前と寝るって言ったんでィ」

「あー、えっと」



眠たくて呂律が回らないし、上手く考えられない。



「この前からずっと、悪夢見てて、寝れなくて...」

「...」

「それで、神楽が誰かと一緒に寝ると良いって」

「へぇー」



神楽が言っていたのはこれかな。沖田さん寝てないけど。人肌って凄くいい、暖かい、眠くなる。



「おい、寝んな...」

「沖田さん、暖かい、眠くなる...」

「そうかィ」



無言だけど、その無言すら心地いい。万事屋では恥ずかしくて背中に体重を預けられなかったけど今なら預けられそう...。


羞恥心より眠気。



「なる、着いたぞ」

「.....」

「町人B起きろ」

「...ありがとう、ございます」



屯所に到着するまで私は眠っていたらしい。町人Bで起きる私って、どんだけ町人Bが染み付いてるんだ。



沖田さんは虚ろな私を自室まで運んでくれ、片手で私を支えながら、布団まで敷いてくれた。



優しいなーって思っていたら、雑に布団に落とされた時は、そーいうとこだよ、沖田って言いそうになった。ま、ここまで黙って眠らせてくれたし、運んでくれたことでチャラにしよう。



「えらく、上からじゃねぇーか」

「...顔に出てました?」

「声に出てた」

「マジでか」



顔だけじゃなくて声にまで思ったこと出ていたのか。



「山田さんには言っときまさァ。寝てな」

「はい」



優しい。
沖田さん優しすぎないか?絶対裏あるよね??
明日は空から雨じゃなくて槍が降るな。よし、外には絶対出ない。







_________
______




「.....ん」



あたたかい。


あのあとすぐ寝ていたらしい私は、みんなが眠りに着く頃に目が覚めてしまった。
結構寝ていたなぁって思いつつ、腰や足に違和感を覚えた。いや、腰や足だけじゃない。顔の近くから誰かの寝息が聞こえる。


え?誰?


暗闇の中、慣れない目を頑張って凝らす。



「え...?」



沖田さん!?うそ...じゃないよね、顔に感じる息が嘘ではないと言っている。


腰や足に感じるのは沖田さんの腕と足。


私は沖田さんに抱き枕状態にされている。



「...なに騒いんでるんでィ」

「なんで..お、沖田さんが...」

「...なんとなく」

「えぇ!?」


何となくで添い寝って出来るもんなの!?さすがイケメンですね!?


「今馬鹿にしただろィ」

「してないです」

「ゆっくり寝れたろィ?」

「え...あ」



そっか、さっき神楽が言ってたこと試してくれんだ。



「気持ちよさそうに寝てましたぜ」

「さいですか...」

「間抜けな写真もありますぜ」

「は!?け、消してくださいよぉぉ!!」

「嫌でィ!!」



寝顔なんて...1番見られたくない相手に見られてそれも写真撮られるとか...弱味握られたもんじゃんか。



「そんなこと言っていいんですか。私ジェットコースターでテンパる沖田さんの動画持ってますよー」

「...ッテメ!」



そこから沖田さんが私のケータイを奪おうとしてそれを私が阻止してとの攻防戦を繰り広げた。




「うるせぇぇぞ!!!何時だと思ってんだァァ!!」




遅くまで仕事をしている土方さんにこっぴどく怒られたのは言うまでもない。




添い寝は癖になる
(沖田さん、また添い寝してもらってもいいですか?)(黙れ)

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